《インタビュー集 目次》

 

● 植野 祐美 ロングロングインタビュー 大学編

● 植野 祐美 ロングロングインタビュー 高校編 その1

● 植野 祐美 ロングロングインタビュー 高校編 その2

● おかもとひろき インタビュー

● 久保田 奈津希 インタビュー

● 植野 祐美 ロングロングインタビュー その1

● 植野 祐美 ロングロングインタビュー その2

● 植野 祐美 ロングロングインタビュー その3

● 双葉 インタビュー

● 二宮 咲 インタビュー

● 益子 祐貴 インタビュー

 

 


植野祐美インタビュー 聞き手 じんのひろあき
 大学にダンスで入って基本的には何をやっていたの?
コンテンポラリーダンスっていう私も知らなかったジャンルですね。高校の時に、
身体表現っていう授業があったんです。その先生は高校のOGですけど、
その人が桜美林でコンテンポラリーを日本に持ってきた第一人者の木佐貫邦子
先生に学んでいたんです。それで卒業して自分で活動しながら高校の教師をや
っていたっていう」
 活動っていうのはダンサーとしてなの?
「ソロダンサーで、それをしながら高校で教えてって感じでやってて、その先
生に二年ぐらい授業で教えてもらいました」
 何人ぐらいで授業を受けていたの?
「二、三十人はいましたかね」
 習うのはコンテンポラリー?
コンテンポラリーをやる時もあればジャズっぽいのをやる時もありました、
身体表現としてもやるんですけど、フィールド発表会っていうのがあって、一
年を通してその授業を受けて、発表会というかほぼ公演ですね、一時間規模の
作品を作って全校生徒の前で発表する」
 それは三月くらいにやるの?
「三月です」
 え、ちょっと待って、っていうことはキミは一年生の時に演劇&ミュージカ
ル部で大会に出て、二年目にチャペックの芝居やって、三年目に劇団作って芝
居やってたわけでしょ? その間に三月のそのダンスの公演をやってたってわ
け?
「そうです、そうです」
 はははは……
「授業はまた別ですから……」
 その先生の授業で初めてコンテンポラリーダンスに出会った?
「そうですね。まず体作りっていうところから始まって、ストレッチとかもそ
うなんですけど、人の体を別の人間が動かしたりとか、そこで信頼関係が生ま
れないと、うまく人の体って動いてくれないとか、そういう意識的なことから
入って行くんです。そういう身体の動きとか、どこまで可動範囲が広げられる
か、とか、みたいなものを学びました」
 先生は踊って見せてくれたりしたの?
「はい、踊ってくれたりもしました」
 それはやっぱり凄かったの? 見て。
「凄いと思いました。人の体ってここまで動くんだって思ったし、綺麗だし、
やっぱりなんかもう違うんですよね、部活とかでやっている動きとかとは全然
ちがくて、振りが楽しいとかじゃなくて、動きが綺麗なんですよ。もちろん、
スタイルも凄い綺麗な人なんですけれども、一本芯が通っていて、そこの中で
人があまり見たことがない動きをしていく。それで音楽に合わせてというより
かは、本当に動きとか間とかだけで、やっていく感じ。それがなんか一人だけ
違くて凄かったです。真似したいと思った(笑)」
 真似したいと思ったんだ。それはコピーできなかったの?
「その授業の中では一生懸命吸収しようとしたし、同じ動きもしてみたけど、
でも、やっぱり動きだけじゃまかなえないものがあったなあと思って。それは
たぶん、日頃の鍛錬だったりとか、自分の体と向き合っている時間が違うんで
すよね、格段にもう、ずっと見ているんだろうなって」
 それで、その先生の師匠にあたる方に大学で授業を受けることになるわけ
で。師匠の師匠にはやっぱ違ってた?
「違いましたね、うふふ、違いました」
 一番印象的なことはなんだったの?
「一番印象的なこと。授業でですか? ストレッチの時間が異常に長かったで
すね」
 どのくらいやるの?
「二時間くらい」
 二時間ストレッチするの?
「二時間やってました。コンテンポラリーの授業は一時間半の授業が二コマあ
るんですよ。その前半にストレッチをやって、ちょっと休んで、またちょっと
ストレッチやって。振りもやるんですけど、振りをやる時間が一時間くらいし
かなくて、本当にストレッチだけずっとやってた」
 それってやっぱり三十分ストレッチやって二時間半振りをやるより、二時間
ストレッチやって振りをやる方が濃縮された時間になって、結果も濃密になり
そうだけどね。
「そうですね、完全にそうかも。やっぱり、自分の体って思っている以上に動
くことができるんですけど、でも、全然そういうことをしてこなかった人が多
かったし、ダンスしている人ですら、そんなに長いストレッチ時間ってなかな
かとらないですから」
 先生は自分の話とかはしてくれた?
「可動域の話とか、季節によって体がどうなるか、とか、そういう根本の話を
けっこうしてくれました。凝りの治し方とか、あと、ここがツボよ、とか。声
を出す人は首をちゃんとマッサージしなさいとか、使える体にするためのスト
レッチとかでしたね。だから、演技をやる人でもコンテンポラリーの授業は絶
対に受けた方がいいって言われてたし」
 ああ、でも、みんなそれはわかんないだろうなあ。
「私的に芝居ができるなって思える人は、ちゃんとずっと続けてましたね。そ
れは比例してた。体動かせない人は下手だしと思っちゃうし」
 その先生は発表会みたいなものはするの? 
「発表会はないですね」
 振り自体は先生が作った振りだったの?
「はい、そうです。そんなに長くはないんですけど、一時間の中でできるくら
いの振りを移して、やってやって見てみたいな。ダンスって見る時間が結構多
くて、大体人数が多いから三グループぐらいに分けるんですよ。それで広く使
ってやって、後は全部見てるんです。見ることの方が多いのかな。どちらかと
言うと」
 見ると勉強になる?
「全然勉強になります。やってるより勉強になります。振りとか、やってるだ
けじゃ整理されないのもあるし、人の振りを見て覚えたりもするし。ダンスっ
て前にいる人が上手いんですよ。この子のここ大好きだなみたいなのは、真似
しようと思うし、そういうふうに、自分の中で整理する時間みたいなのが、絶
対に必要で」
 それはイメージトレーニング的なものなの?
「イメトレですね。私、覚えるのそんなにすごい早いわけじゃなくて、大体一
日目って、ほぼ何も覚えられない。一回寝て、寝るのって大事なんですけれど
も、一回寝ると全部できるようになります」
 あと聞きたいことが二つあって、鏡ってダンサーにとっては何なの? 必要
なの?
「絶対必要です! 絶対です!」
 必要なんだ。
「必要です」
 でも踊ってる時って鏡って見れるものなの?
「踊ってる時は鏡しか見てないです。」
 ああ、そうなんだ。でも、常にまっすぐ見てるわけではないでしょう?
「基本的に変形した舞台でない限り、前が正面じゃないですか。それで、やっ
ぱり顔が前にあるのが一番自然でかっこいいんですよ。顔が横向いてる角度で
も普通に前を見ているし、ターンする時よく言うじゃないですか、前を見ろっ
て。自分の顔を中心とした動きとかしか見てないです。だから鏡がなくなると
怖いんですよ。すごく怖くて。発表会とかだと鏡がないじゃないですか。だか
ら鏡を取る作業をするんですけど怖いんですよ。鏡で自分がやりたい動きを、
やってるのを確認しながら、練習しているんですけれども、それが本当になく
なった瞬間、自分がその動きが本当にできているかどうか、落とし込めている
のか、とか、ここ苦手だったんだけど、みたいな動きとか、一気に自分が何し
てるかわかんなくなってくるんです」
 鏡を取るっていうのは、君だけの事なの? それはみんな鏡を取るという心
理的な作業をするの?
「私の場合はですけど」
 それはやっぱりじゃあ君の方言なのかな? 
「空間でモノを見ていることが多くて、こっちが正面だと思っていたのが、急
に反対にされるとわかんなくなります。鏡見ないでやろうかとか言われたりす
ると、急に空間が把握できなくなるんです」
 もう一つは、振りを移されて踊るようになったっていう話は聞いたんだけれ
ど、自発的に自分の振りで踊り始めたのはいつだったの? 
「しっかりそれをやり始めたのは高校の時かもしれませんね。身体表現の授業
で即興ってやるんですよ。振り付けって、今までの動きをつなげてみたりだと
か、音に合わせてこう動いたらかっこいいみたいなのを、組み合わせているだ
けで、ちょっと違うんですよね。振り付けを作ったりは、割とちっちゃい頃か
らやってはいたんですけれども、自分で動きを決めない状態で、動くみたいな
こと初めてやったのは高校生だと思います。あと、この時間だけ受け持ってと
か、この曲は何も指示しないからとか、ダンスの振りではなくて、歩くだけで
もダンスだからって言われて、そういうのを教えてもらったのは高校生の時で
す。めっちゃ戸惑いましたけれどもね」
 何したらいいのかわかんないんでしょ?
「どうしたらいいのかわからないし、なんか、やっぱりみんなやりがちなの
は、振りを思い出しちゃうんです。やれって言われた瞬間に、どんなふうには
今までやってたかなぁみたいな。私も最初はそれから始まったんです。でも、
それだけじゃ音楽にはまらないんですよ。音がなくなった時に、それって使え
るツールではなくて、そうなるともうフィーリングで動くしかないんです。ほ
んとに何でもいいんだなと思ったら、結構動けるようになりました」
 それが高校生の時?
「高校の時はまだとらわれていたかもしれない。大学かな」
 体が動くようになってから、なんでもいいやって思えるようになるものな
の? 気持ちが先なの? 難しい質問だと思うけど。ツールである体が使えな
いと自由にも何もあったもんじゃないじゃない?
「そうですね、その頃体が一番重たかったし、自信がなかったですね。授業で
やった時は、本当にできなくて泣いてました。キライでした。でも、見る人が
いて、それが、そういうものだとして、私は本当に承認欲求が強いから、なん
かそういう場になってくれないと、怖くて自分が出せないんですよ。そういう
場っていうのは、雰囲気もそうですけれども、ちゃんと見てくれる人がいたり
とか、その世界がそういうものだとして受け入れてもらいやすい空間に自分が
置かれた時、そこに自分の自信が重なった瞬間、できるようになるんです(笑)
 その瞬間が、得られたのはいつだろう? やっぱり大学生……やっぱ公演か
なあ、公演ですね」
 公演なんだ。
「三年生の時の公演の中に即興があったんですよ。だいたい、自分のやりたい
パターンみたいなのがあって、得意な振りとかですね。でも、誰がどう動くか
わからないから、自分でやっていくしかなくて、自分が見て欲しいと言う見せ
場みたいなものも同時に作っていかなきゃいけなくて、前に出なきゃいけない
し、みたいな。最初は前に出れなかった。後にずっといたかったけど、ある瞬
間から、出ようと思って。前にいっぱい出るようになりました」
 それは何を獲得したの?
「気持ちをまず強く持つことと」
 それを本番中に持てた?
「本番中はめちゃくちゃ持ってるんですよ(笑)」
 めちゃくちゃ持っているんだ(笑)
「稽古中ですね。稽古中の何も決めきれていなくて、自分がどうやっていいの
か分からない状態が一番怖くて、それはどこでもそうだと思うんですけれど
も」
 じゃぁ、その受け入れてくれる空間を、場を作っていければいいと言うこと
なんだね。ダンスをやるには。会場とか劇場とかじゃなくて、場をいかにつく
るかなんだね、植野祐美の次の課題は。

植野祐美ロングロングインタビュー 高校編 その1 聞き手 じんのひろあき
 さあ、そんなわけで高校入りました。
「高校入りました(笑)」
 普通科ではなかったの?
「普通科っていうのがなかったんですよ。個性科か国際科か」
 (笑) 個性科って何?
「個性科っていう、自分の好きなことをやりなさいみたいな、自由なところだったんです。私服校だし、時間割も自分で選べて、望めば一日休みとかもできるし、一限目全部なしとかもできるし、なんか、大学みたいな高校だったんです」
 パーソナルな学科か、インターナショナルな学科しかなかったって言うこと?
「そういうことです(笑) 国際科は第二外国語までやらなきゃいけなかったんです。英語と何か別の外国語みたいな。多分普通の高校の国際科とも違っているんですよ」
 それって偏差値って高いの?(笑)
「偏差値は65です」
 高いね、そこに植野祐美さんは頑張って入ったわけだ。
「私は65もなかったんですけれども、59とか61とか、その辺だったんですけれども、そこでがんばって、その学校に無理矢理入り。落ちこぼれていくと言う(笑)」
 一応念のため聞いておくけれども、個性科に入ったの、国際科に入ったの?
「個性科です。演劇の授業と思ったんですよ。身体表現の授業とかいろんなのがあって、その中にダンスとかがあったんですよ。弓道とか居合いがあったりとか」
 部活はどうしたの?
「部活はミュージカル&演劇部と、あと書道同好会」
 え? 書道同好会に入っていたの? 字とか書いていたの?
「書きましたね」
 なんで?
「書道好きだったんです。だったっていうか……今も好きなんですよ」
 ほんとに?
「私、おばあちゃんが、習字の先生なんですけれども、それで、小学校入る前から、ずっと教えられていて、うちのおばあちゃんて、私の友達達を集めて書道教室を開いていたんです。でも、友達みんないろいろ都合あるから、火曜に来たり水曜に来たりとかするわけじゃないですか。一番多い時だと週四日とか五日とかやっていて、それ全部、家でやるから私も週に四日とか五日とかお習字をやることになって……私のお母さんは、習字の道に進んでもいいんじゃないかと言ってたくらいで」
 それは書道家ってこと?
「書道家っていうか、字を書く人になればって。すごい言われたんですけれども、私はお芝居が好きだったから……」
 書道って、段とか級とかあるじゃない?
「しっかりした検定みたいなのは受けてないですけれども、ああいうのって、会社とか、教室の中とかで決めるんですよ。でも私はそういうのじゃなくて、墨家みたいなのがあって、そこで一応、特待まで行きました」
 特待?
「特待っていうのは、十級から九級八級って行って、一級から初段、二段、三段で、六段まであるんです。で、あの段にも『天、地、人』というのがあって、その六段の天を終えると、さらに昇級試験みたいなのがあって、それに受かると特待生になるんです。一応そこまでは頑張ろうって言って、やりましたね」
 という事は、六段の上の位ってことなの植野祐美は?
「一応……」
 師範とかなの?
「そういうのはないんです」
 じゃぁ、もしかして凄いうまいの?
「結構自分では得意だと思っていますよ。でも見せる機会ないですから」
 なんでそういうのって黙ってるのぉ? 植野祐美は! ダンスといい、書道といい!
「字書くことってあまりないですし」
 本当にもったいないなお前は。ああ、びっくりした。そんなに字がうまいんだ。
「はい、結構」
 今、植野祐美、芝居よりも自信のある顔しているよ。
「お芝居よりも、目に見えて分かりやすいじゃないですか、草書とか、崩した字になってくると、自信があまりあんまりないんですけれども、結構しっかりやっていたのが、中学卒業する位までだったんで、楷書ですね」
 お習字の先生が家にいて、毎日毎日、お習字やってたんだもんね、それはうまくなるよね。
「そうですね。あの時は狂ったようにやっていましたね。だから、土日は児童の劇団に行って、平日は、習字とかそろばんとかをやっていたんですけれども、習い事がすごく激しかったですね」
 じゃぁ書道同好会とか入ったら圧倒的だったでしょう。
「私の、二つ上の先輩にすごいうまい人がいて、その人はもう国立大学の書道科に行ったりするような人だったんですけれども、正直言うとその先輩しかうまくなかったですね。その先輩が結構私をいい子いい子してくれたんですよ。部員がすごく少ない同好会なんで、作品の発表は文化祭で作品展を開くくらいでした」
 長半紙とかにも書くの?
「あと、でっかいやつとか、細々したものとか一人三、四点出してました」
 そして、それと、ミュージカル&演劇部。
「基本はそこですね」
 どうだったの? ミュージカル&演劇部は?
「これもまた、不思議な感じで、顧問の先生というのが、名前だけで、絶対に来ないんですよ。現れないから、生徒だけでやるんですけれども」
 何人ぐらいいたの?
「私が入った時は結構多くて、30人ぐらいいましたね。2学年で30人。私の次の代がもっと入ってきて、40人ぐらいになりました」
 それで、先生が来なくて。
「先生が来なくて、生徒達でやるんです。だから演出とか、もう全部」
 それは先輩が?
「最初は先輩なんですけれども、やりながら一緒に覚えていく感じで。新入生の、お披露目会みたいなのが、6月くらいにあって、終わったら、すぐ次に大会があるんですよ」
 いわゆる高校演劇の大会?
「そうです高校演劇の大会です。『だいたい50分の演劇で』ていう括りしかなくて、(舞台の)転換が前後で10分ずつ位でっていう、決まりだけあって、その後は何もないから、私たちは創作でミュージカルとかやって

たんです

 

つづく……

 

 どうやって作るの? 創作のミュージカルって?
「脚本書きたい人がいて、作詞作曲をやりたい人がいて、振り付けをしたい人がいて、歌える人が歌ってみたいな」
 超、楽しいじゃん。
「やりがいしかない部活でした」
 やりがいしかないんだ(笑)
「やりがいしかない、しかもみんな、結構、本気でやりたい子たちが多かったんで、みんな一生懸命やっていました」
 高校演劇の大会って、ミュージカルは勝ち残らないんじゃないの?
「無理なんです。だから、本当に勝ち残りたかったら、しっかりとした戯曲を選んでとかやらないとなんですけど、そういうのじゃないから、私たちはこのスタイルでどこまでいけるかやってるんですみたいな、それで、こじらせている人が多かったんで」
 それは(笑) 今の植野祐美だよね。まんま。
「こじらせてる……」
 それはまるで君じゃないか。このスタイルでどこまでいけるかとかさ。
「大会に出場するんだけれども、見てて楽しいものに絶対していきたいねって
 大会が終わって、学内ではやらないの?
「学内でもやります。私達が1年生の時にやったやつは県大会まで行ったんで、それが10月の最後から11月にかけてやって、その後、クリスマス公演て言うのがあるんですけれども、そこでも同じ作品をやりました。文化祭が9月なんで、勝つと半年ぐらい同じ作品に付き合うことになるんです」
 じゃぁずっと稽古することになるんでしょ? 飽きない?
「公演するたびに、後で、あそこがああだった、こうだったとか言って、反省点が出るから、同じことをやらないで、ここはこうしようって、改訂されていくんです。あと、劇場によって舞台が大きくなったりとかするし、だからその分」
 リサイズするわけね? 芝居を。
「稽古だけじゃなくて、大道具とかも自分たちで結構しっかり作ってました。高校生の時から、みんなインパクトを振り回して、ナグリ、ナグリって(笑)小劇場のちっちゃい所と同じようなことをやっていましたね高校ぐらいから」
 じゃぁ、舞台監督的なことも伝授されていくの?
「伝授されました。私も舞監は何回かやりました。演出もやりましたし、短編だったら書いたこともあります(笑)言えないけどそんなことは(笑)」
 なんで?
「やばいです……」
 じゃぁ、舞台監督もできるわけね植野祐美は。
「スタッフワークはその後、大学に入って、演出部とかは一応経験しているんで」
 ガソリーナに来た時びっくりしたでしょう、舞台監督がいないし、いろんなものがゆるゆると進んでいって何とかなっちゃうって言うのを見たときに。
「そうですね、舞台監督がいないのはびっくりしました。舞台監督がいなくて、ひどかった団体をいちど経験しているので、舞台監督いないけど、ガソリーナはいろんなものがするする行くのはびっくりしました」
 その高校1年の時に勝ち残った芝居をやったわけだよね。
「そうですね、高校1年の時です」
 若い時に演劇をわーっとやって、その時の成功体験みたいなものあるでしょう? あの時のあれってすごかったなぁ。だからもう一度やってみよう。あの体験をもう一度! って思ったりするものじゃない? それをどっかで追い求める、みたいな。
「うん、どうだろう、高校の時の勝ち進んだうれしいさっていうのは確かにあったんですけれども、それが、直接的にあるのかなあ……でもない気がしますね……あれはあれで、別物だった気がします」
 その時は役はついていたの?
「役はついていました。やりたかったキャラクターだったんですけれども、人数増やすために、それを双子にしたんですよ。その片割れだったんです。だからなんかちょっとだけ、不満を感じたりとかしましたけれども。でも、最終的にそのことをすごく仲良くなって、大親友になって。今思うとよかったかなって。次ですね、2年生になって主役をやらせてもらったんですよ」
 それは、大会用のやつなの?
「そうです大会用です。内容的には、高校生がやるような内容では全然なかったです」
 何の話だったの?
「『RUR』って言うやつで、ロボットのやつです。誰だっけ?」
 カレル・チャペック。
「それです! チャペックです! 」
 すごいでしょ(笑) こうやってすぐ出てくるのは。
「すぐ出てきますね。すごい。私いつも、あれは? あれは? ってずっとなっちゃうんです」
 ロボットと言う言葉を初めて使った戯曲だよね。

(注)
 『R.U.R』(原題: チェコ語: Rossumovi univerzalni robot (ロッサム万能ロボット会社)
 チェコの作家カレル・チャペックによる戯曲。
 1920年に発表された。この劇の発表によって「ロボット」という言葉を創り出した、歴史的作品である。
 しかし、劇の内容からアイザック・アシモフがロボット工学三原則を使った作品を発表するまでの間、ロボット=反乱というイメージが付きまとうことになる。

「そうです、そうです。それで、主役の女の人をやらせてもらって、でもすごい辛かったんですよね。それが」
 そうなの?
「人数が多かった」
 あれって結構タイトな話だよね。
「タイトなんですよ。主人公はロボットなんですよ。ロボットって、アンサンブルみたいな感じの役になってしまうから。高校生で、アンサンブルを作ると言うのがやっぱり大変で。アンサンブルって、結構難しいじゃないですか。土台になってなきゃいけないし、自分がアンサンブルだと言うことを認めなきゃいけないと言うことも、高校生の自我が強い時って難しいんですよ。でそれを、まとめるのが、先生じゃなくて同じ生徒なわけです。そうなった時に、やっぱりうまくいかなくて、どうして私がアンサンブルのこっちなんだとか」
 アンサンブルって? インタビューを読んでいる人にやさしく解説して(笑)
「アンサンブルは、役名がついていなくて、シーンによって、役割が変動していったりとか、ダンサーをやったりとか、コーラスやったりとか」
 『何でもやるその他大勢』ってことだよね。
「そうですね、何でもやるその他大勢です。だから後、個性を出すのは難しいし、出したいけないじゃないですか。でもこれがすごい大事なんですよね。そういうものになってくると」
 一緒に稽古しなきゃなんないしね、アンサンブルと呼吸合わせて。
「そうですね」
 アンサンブルだけで稽古ってできないんだよね実際。そうやってやる人いるんだけど、多分絶対うまく噛み合わないと思う。で、それは勝ち進んだの? 
「1回は勝ったんですけれども、2回目の中央大会で落ちちゃって、県大会は行けなかったんです」
 主役とかやっていると、やっぱり負けると泣いたりするものなの? 
「うん、泣いたのかなあ」
 そんな感じなんだ? 
「泣いてないかもしれないです。なんかだから、結構、辛さがすごかったから、」
 ほっとしたの? もうこれでやらなくても済むって。
「私自身は、もう少しやっていたかったんですけど、部活が割と危険だったんです」
 危険だった? 危険なところまで行っちゃったわけだ、部活が。
「危険でしたね「一回休まなきゃ私たちは」という所まで行ってたんで「休まなきゃ」って意見を聞いて、うん、なるほどって思ったくらいです」
 高校演劇ってのは2年の終わりで引退になるんじゃないの?
「引退しました。でも引退しても、自分たちで、劇団みたいなのを作って、文化祭で発表したりとかしてたんです」
 高3の時に? 
「高3の時です。勉強しないんです。だから、そこで、受験勉強と言うものがおろそかになりまして、文化祭が9月なんですよ。受験勉強は9月に始めたら遅いんですよ。頭良い学校だったから、みんなが高みを目指していくわけじゃないですか」
 どこを目指すのその頭のいい高校の人たちは? 
「早慶です」
 個性科の人たちは早慶で何を目指すの? 文学部とか? 
「まぁ、文学部とか行く人もいますし、演劇の人たちは、明治が多かったですかね。あと明治学院」
 日芸とかには行かないの? 
「一番多かったのは日芸ですね。でも私、なぜか日芸だけには、心がときめかなかったんです。なんでですかね(笑) わからないですけど。日芸じゃないって思ってたんですよね。それでその頃、演技は学ぶものではないと思っていて、大学で演技を学ぶと言うことが、意味がわからないと思っていたんです。演劇は学ぶんじゃなくてやるものでしょって。でも演劇に触れてはいたいと思って、私も明治を目指したし、明大も、滑り止めで受けて。どっちも滑ったんですけれども。私、英語がすごい苦手でどっちかって言うと、頭は理数系なんで」
 え! そうなの? もう、植野祐美の知られざる様々なことが……インタビューしといてよかったよ。
「数学がすごい好きだったんですよ」
 理数系なの君は?
「お兄ちゃん理数行ってるし。好きなのは国語と数学だったんです。英語がダメで。英語がダメだとどこも入れないんですよ。(笑)」
 (笑)うん、そうだね。
「でしたね。結局入れず、でホントは浪人まで考えたんですよ。結局、行きたかった大学には落ちて、どうしようってなったときに、桜美林の三期の募集を見つけたんです、一期、二期、三期、で一番遅い、3月の頭に受験、ていう三期を募集してて、そこまで桜美林、ほとんど見ていなかったんですよ。それで、その三期は、勉強も見ない。もう実技だけしか見ない、AOの一番最後みたいな感じだったんです。それで見てみたら、演劇全部やるって書いてあって、コンテンポラリーのダンスもできる。私の中で、ダンスは教わるものなんです(笑)。何なんですかね、わかんないんですけれども、歌も好きだし、歌はその頃、声楽に通っていたんです。それで、演劇は学ぶものじゃない、となると、私はここでダンスをやったらいいんじゃないかと。その短期間ですけど、がーって考えて、一応じゃぁ、受けてみようと、どうせだったらダンスコースを受けてみようと」
 と、いう事は、実技はダンスだったの? 
「ダンスです。その時に、受験者が三人しかいなくて」
 えー! 
「そのうちの一人が来なかったんですよ。で、二人だけで、ダンススタジオを二人で、大きく使って受けました。もう一人は落ちちゃったんですよ」
 って、一人しか受かっていないということなの。
「でも、三人しかいなくて二人だったから、倍率的には二倍でした」
 二倍って数えるものなのそういう時は? そもそも三期募集までやってるんだから、枠ってないんじゃないの? わかんないけど。
「たぶん、枠はなかったと思うんですけれども、そこで何人だけというわけでもなかったんだと思います」
 それで受かって。
「それで受かって桜美林大学に進みました」
 桜美林大学に行って、授業はダンスだったの? 
「入って、気がついたんですけども、ダンスコース、演技コースは、別れてはいたんですけれども、やる事は大体一緒なんですよ。中に入ったら、コンテンポラリーダンスの授業も全員受けられるし、芝居の基礎演技みたいなのも、全員受けられて、一年生が選択できる基本のセットは大体決まってたし」
 ああ、なるほどね。
「これを受けなさいみたいな。その基礎演技と、コンテンポラリーダンスか、あともういっこ、体動かす授業のどちらかを選べてみたいな感じだったんです。その後はその、スタッフの授業もあって。それも絶対とらなきゃいけなくてそれも絶対とらなきゃいけなくて、最初はそれを全部受けてみて、自分が何やりたいかを、そこで考える。一応全部知ってみて、そこで考えてじゃぁ2年生とかで、自分のやりたいことをもっと深めていいよって言う、そういう感じですね」
 技術スタッフの勉強って何やるの? 
「えっと、音響、照明、舞台監督もありましたし、後は、大道具作るのもありましたし。衣装だけははさすがにやっていないくらいで」
 じゃ、植野祐美、パネルとか叩けるの? 
「叩けますよ一応(笑) 結構好きだったんですよ。その授業以外にも、OPAPっていうのがあって桜美林大学プログラムっていうのなんですけども、先生が、一人主体となって、一公演作品を作るんですけれども、それが結構しっかりした公演みたいなもので、先生は本当に演出も一人だけで、後は全部、生徒がやるんですけれども、それで大体、役者とか、パフォーマーの、オーディションがあって、それに、受からなかった人たちと、もともとスタッフやりたかった人たちが裏方に回るっていう感じですね。私は最初は演出部と、美術もやりました、あと制作もやりました。一番やったのは制作かもしれない」
 ちなみにそれは何の作品だったの?  1年生の時は? 
「1年生の一番最初に会ったのは、木佐貫先生のダンスOPAPだったんです。1番最初は高瀬(久男)さんがが『エレクトラ』をやっていたんですけれども、その時に学生団体の別のやっていて、そっちに受かって出ちゃって、スタッフはやらなかったんです。1番最初にスタッフをやったのはダンスです」
 たぶん、そうなると、植野祐美が桜美林に入る1年前にそのOPAPでやったのが、高瀬久男さんが演出した、私の戯曲『デビルマン 不動待ちながら』だったんだよ。
 そうか、あの後に植野祐美は桜美林大学に入学してきたんだね。

 大学編に続く。


おかもとひろき インタビュー (聞き手 じんのひろあき)

「改めて喋ること、あんまないんですよ」
 え? 本当に?
「ほんとですよ、まじですよ」
 語ることがない?

「なんですかね、言語化するのは苦手なのかもしれないです」
 あ、そう
「『ハンター×ハンター』という漫画で、敵役の幻影旅団というのが出てきてまぁそれの団長が、そういう動機を聞かれて「自分はそういう思いを言語化するのは好きじゃないからだ」みたいなこというのを読んで、そうだよな! ってすごい納得した記憶があるんです」
 『ハンター×ハンター』なんだ
「その団長の一言が、ものすごい印象に残っているんです。まぁ向こうは全然そんなこと望んでいないでしょうが、一方的に僕のほうは、あー!そうそうそうと思って、」
 で、どうなんですか今回は
「大変ですよ。今までが大変じゃなかったかって言うと全然そんな事はないんですけれども、これ言っちゃっていいのかな、今回は、東京 03みたいなのを取り入れてということで、稽古が始まったわけじゃないですか」
 それは、詳しく言うと? なんで東京03を取り入れることになったの? 誰が言ったの? (笑)
「それは誰が言い出したのと言われたら、今このインタビューをとっている、じんの氏なんですけれども、いきなり「今までのじゃだめだ、変わっていかなければいけないんじゃないか」と言い出して」
 それは、いつぐらいの話なの?
「3月の中旬ぐらいですかね。LINEのグループとかで東京03の話をし始めて。彼らは非常に演劇に近いコントをやられるって。僕らの突破口はこれなんじゃないかって……」
 突然言い出したんだ(笑)
「突然言い出したんです。こっちにしてみたら、ほんと突然ですよ、前置きも何もないじゃないですか」
 前置きは何もないよね。みんなで見に行っておお! と感銘を受けたと言う事でもなく、突然、じんのさんが言い出したわけだからね。
「いきなり、これを取り入れると言い出して。「はー! はいそうですか」という感じですよ。そういうところで、確かに、じんのさんちで見せてもらった東京03のライブは、なんていうんですかね、コントの枠は外れないけれども、外れないからこそのドライブ感というか・・・、日常を描くけれども、その中で、これはありえないだろうと思いながらも、ああ「あるある」と受け入れている自分もいるんです。で、そのなんて言うんですかね、前回、前回といっても本当に一ヶ月前に上演した『先生の結婚式』という演目があるんですけど、それをじんのさんが「作り直そう、東京03風味で」って、結局、あの作品が一番最初に槍玉にあがったんですけれども」
 槍玉って、そんな (笑)
「槍玉って言うのもアレですけれども、この話こそ、東京03みたいにもっとポップに変えていけるんじゃないかと」
 私の『先生の結婚式』は東京03の要素を入れてもっとポップにわかりやすく、見やすく生まれ変わるんじゃないかと直感したんですよ。いわゆる我々が言うところのメソッドを変えようと。東京03のメソッドにシフトしようと。それを突然言われどう思ったのそれで?
「いや、でも納得したというか、確かにそうだよなと思って、僕らは『ShortCuts3』でやっていたものは、よくも悪くも交わされる会話自体突飛なことを言ってるけども日常だったわけです。どこまでいっても日常会話。その起伏が非常にまろやかというか、これはこれで良かったと思うんですけれども。もっと見やすく、面白くと言う意味では、ぜひ取り入れるべきだなと思いました。ただ、思うのとやるのとでは全然違うくて、まぁ今でもそうですけれども、どうするよっ!?て言う。変な話、僕はじんのさんと芝居を始めて15年間、ずっと、これだっていう、こびりついていたメソッドがあるわけじゃないですか、『メトロポリスプロジェクト』で短編を150本作って。それをじゃあ変えましょうと言われてそう簡単に変わるか!、というのが非常にありまして」
 すごいよね、じゃあ「変えるよ」って言って変えようとするんだから。
「まぁでも演出家が変えるって言うんだから変えなきゃなって。自分がこだわってでもしょうがないじゃないですか。でもそのじんのさんの中でもなんでしょう、取り入れるのはいいけど、じゃあどうするよっていうのもあったんじゃないんですか? 逆に僕が聞くのもアレですけれども」
 あーなるほどねー、イメージの問題なんだけど、私は音楽に詳しくないからわからないんだけど、曲はアレンジするじゃない? だからアレンジを変えるつもりでやればできるんじゃないかと思ったんだよね。これはアレンジだと思うので、曲が変わってないわけじゃない。でもアレンジによっていろいろ、変わるでしょ曲って。
「もともとジャズの曲をロックバージョンでやるとかってことですか?」
 そうそうそうそうそうそう。
「ああ、そういう意味ですか。でも変な話、ジャズしかやってこなかったのに急にロックをやれって言われて、えー!って言うのがあったんですけれども、じゃあどっから、まぁ他の出演者たちがどういう風に捉えているのか、やっているのかと言うのはひとまず置いといて、まぁでもやっぱりこれは、東京 03を真似るしかないのと、そのうち真似ていけば何か自分のものになっていくのかなと思ったんです」
 私に言われて見たりしたの? 東京 03は?
「『後手中の後手』が本当は見たかったんですけれども、VOL14、ですね。(『後手中の後手』というタイトルは。今回一番参考にした東京03のライブDVDです) VOL16か何かがあってそれは見ました」
 え? 家にあったってこと? おかもと君は私が勧める前から東京 03を見ていたの?
「TSUTAYAですよ」
 ああ、TSUTAYAか。そうだよね
「そもそも、家にあって見ていたらそこまでびっくりしませんですよ。それで見てあーそうかと思って。それでとりあえず、とにかくコピろうと思って。それは、昔、ガソリーナであった『キタイ』という芝居の時に、じんのさんに「古舘伊知郎さんみたいにやって」と言われて、ひたすらYouTubeで古舘さんのプロレスやらF1の実況聞いてコピーしていたと言うのに近い作業をしてたのに、近かったですね」
 真似から学ぶ。
「そうですね」
 それで、手ごたえはあったの?
「まだ、自分の中ではあんまり・・・。でも、見ている人のリアクションが変わっているから、これはきっと変わっているんだなと思っていました」
 それはどういう時に手ごたえを感じるものなの?
「見ている人のリアクションが明らかに違うので、変わってきているんだなとは思いました。それで、自分がやっている時に自信がないと、見ている人達がノーアクションなんで、やっぱりわかりやすいな、ガソリーナはと思いました」
 良い意味で露骨だよね、ガソリーナのみんなは。あと、全体的にはどうなの? 今回は? 女の子が多いですけど。
「それは、去年の『櫻の園2』からずっとそうなんですけれども」
 でも、前回の『ShortCuts3』はそうでもなかったじゃない?
「それはそうでしたね、久々に、楽屋に男がいるって感じでしたけれども」
 今回は、女優が多く、かわい子ちゃんぞろいで。
「まぁ華やかでいいんじゃないんですか。ガソリーナは、今後こういう方向で、やってくのかなと」
 どうしようか、ガソリーナが今後こういう方向になると言うのはどう思うの?
「ただ、やっぱりその、自分がイケメンでも何でもないし、そういうものを売りにはしていけないわけですよ。今までもしてこなかったし。何かそうゆう、ここに来れば、なんていうんでしょうか、かわい子ちゃんたちのそーゆー、赤裸々と言ってしまうとなんかこの文面だけ読むと誤解を招いちゃうかもしれないんですけれども、女の子の生っぽいやりとりを見ることができると言うのは、まぁなかなかないんじゃないかと思うんです。やっぱりどっか、男性目線で、こういう女の子がいいなと言う男目線で加工されたものは数多く見れるわけですけれども、なかなかその女の子としての、良い意味での、赤裸々な本音は見ることができないじゃないですか。でも、でもですね、果たしてねほんとにそれが、見たいものなのかどうかはともかく」
 (笑)だよね。そうだよんね。
「こんなことを女の子は考えているんだと」
 そういう印象なの、今回の女の子たちの話から受ける印象は?
「今回ですか?」
「女は怖いなーって感じですよ」
 そうなのへー
「やっぱりそうですね」
 あ、本当。
「何か怖いっていうか、」
 うん、確かに怖いと思うよ確かに。『公金横領』は本役(実際に本番でやる人達)以外にも、いろんな人たちに読んでもらったけれども、みんなそれぞれ嬉々としてやってるよね。すごく楽しんでやっているよね。
「『真(チェンジ)』とかもそうですよね」
 『真(チェンジ)』『公金横領』がそうだね。
「嬉々としてやっているから、こういうことを本当はみんなが言いたいんだろうけれども、なかなか言えなくて、それを台本に書かれている台詞があるからこそ、それで発散してると言うイメージがとても強いですね。台本にある台詞と言う免罪符というか(笑) それでこの言葉を言っていいんだと、言う環境与えられたときに噴出するものがあるんですよね、きっと」
 ああそういうもんかもね。
「だからやっぱり怖いと思うんですよ(笑)」
 でも何か、良い領域に入っている感じがすごく手ごたえとしてあるんだ。
「そうですね」
 われわれは。
「それがその別に、女の情念とかではなくて、それがやっぱりポップに表現されていると言うあたりが。それがおかしみであり、笑いどころであるんじゃないかと思うんですよ。後は、数少ない男性キャストとしては、一緒に共演する残間統さんとの、いいオヤジポジションで、そういった、ナイフのように尖った女の子たちの中で、ちょっとした箸休めになればと思うんです」
(笑)ハハハ、箸休めなんだあれは。そしてうまくまとめに入ったね。じゃあ、この辺で。


 

久保田奈津希 インタビュー (インタビューはじんのひろあき)
 さぁ、じゃあ順番に聞いて行こうかね。
「インタビュー……」
 そうですよ。
「何を聞かれるんだろう……」
 生まれはどこなの? そのあたりからまず……
「生まれは愛媛です。愛媛の南松山です」
 四国?
「四国です」
 いつまで四国に?
「高校まではいましたね」
 どんな子だったの? 高校生の時は?
「高校生の時はですね、中学まで、いまいちパッとしなかったから」
 いまいちパッとしなかった(笑) それはなんでそう思うの?
「友達がいなかったわけじゃないんですけれども、クラスの中で、目立つ方と目立たない方みたいなのがあるじゃないですか。最近で言うスクールカーストってやつですか。その下から2番目くらいにいるなと思って」
 え? 目立たない方の?
「目立たない方です。その目立たない方の下から2番目くらいにいたんです」
 悪い方じゃん!
「そうです、状況的に悪くて、もともと、すごい頑張れない性格をしていたんですよ、子供の時から」
 いいね、頑張れない性格って。
「頑張れない。なんかあの、そんな、がんばらなくても、できることとはできるみたいなことを覚えちゃったから、努力をしない人になっちゃったんですよ」
 それはなんでなの?
「たぶん、親が甘かったからだと思います。可愛がられていたから、お調子に乗っちゃったんだと思います。その中学にいて、なんか調子悪いなっていうのは感じていたんですよ」
 ズレてるみたいな?
「そうです、そうです。それでも、やっぱり頑張れないところがあるから、私、数学がめちゃくちゃ嫌いで、数学のない高校に行きたくて、商業高校に行ったんです」
 そのぶん、簿記とかあるんじゃないの?
「簿記あるんですけど、簿記がある代わりに数学が3年生の時になかったわけです。だからそこ行こうと思っていて、そしたら、ギャルばっかりで。でも、ギャルばっかりのとこにいたらギャルになれるのかなと思ってたら全然なれなくて、浮いちゃってて、友達もすごい少なかったし、暗黒でしたね」
 松山のギャルって何をしているの? 周りのギャル何をしていて、何についていけなかったの?
「当時の流行だと、まぁ音楽だったら倖田來未、EXILEみたいなのが流行っていて、でも全然私普通に否定したいわけじゃないけれども、いいところがマジわかんなくて」
 倖田來未の?
「(笑)何かしっくりこないなと思っていたんですよ。もともとアニメとか好きだったんでアニメはすごい見てて、音楽も好きだったから、それでビジュアル系バンドとか聞くようになっちゃって」
 ああ、もう全然ダメだねそれは。
「そうなんです全然だめなんですよ。それでロリータとか着ちゃうから、全然ダメで、ちょっとだけいじめられてましたね」
 いじめるっていうか、奴らにしてみたら、こいつを自分たちの仲間として認めちゃったら、自分たちの居場所がなくなる感じでしょう。
「そうそうそう、なんか、この子に触れないでおこうっていう空気なんですよ」
 アンタッチャブル。
「そうそうそうです。あいつと関わるのはやめとこうみたいな空気を出している子でした」
 いいねぇ、いいねぇすごくいい。
「いいかなぁ(笑)」
 部活とかやっていなかったの?
「部活は、バトン部でした。バトントワリング、それに1年間だけいて、ここもギャルがいっぱいいて」
 しかも、バトントワリングなんて、練習しなきゃだめだから、頑張れない君には向いていなかったんじゃないの?
「それもありますね。頑張れなかった。ギャルの中で頑張れなかった。クソだからほんとに」
 なんてこと言うんだ!(笑)
「ほんとにもう、根性が腐っていたから(笑)あの時の事はね、1番思い出したくないですよ」
 もう黒なんだね。
「黒ですね完全に。クズだなと思って」
 その間は、バトンをやりながら家帰ってアニメ観てたの?
「そうです、おばあちゃんちでアニマックスとか見てました。あとライブにすごい行ってたんです」
 それはどこに行くの? 松山にライブハウスあるの?
「松山に、サロンキティって言うライブハウスが唯一そこだけなんですけど、あるんです。ちょっとメジャーなバンドが来るみたいなライブハウスで、そこにいつも行ってましたね。何か決めずに、来たら行こうみたいな感じでした」
 そこのライブハウスの常連さんだったわけね。
「みたいな感じですかね。それでロリータとかもやっていたから、そういう友達がやっぱ欲しいけれども、商業高校にはもちろんいなくて、それで中学の時の友達が、デザイン系の高校に行って、その子たちは同じような趣味だったんですよ。だからそっちの子と仲良かったですね。他校の友達の方が多かった」
 勉強はできたの?
「勉強はねぇ、やればできたんですけど(笑) やらないから、本当にずっと言われてたんですよ、数学だけ頑張ればもうちょっと上の学校に行けたって言われたんですけれども、やりたくないしーって言って」
 それで、高校3年間、くすぶり続け。
「そう、でも高1で、1番くすぶってて、ちょっとやっぱり寂しくなってきちゃって、友達欲しくなっちゃって、高2でちょっと普通の子になろうとしたんですよ。でも、逆に何か失敗しちゃって。だから一番いじめられた。高1の時のことを忘れたいのに、クラスの子が「なんか、あの子ってさー」って、「あんな格好で街とか歩いてたよね」って、授業中に、手紙とか回されて、そっからちょっと心に闇を抱えました」
 こいつらとは一緒には居れねえ、と。
「そうそうそう。そう思うと高2の方がきつかったかな」
 そんな君の心を癒してくれたア二マックスのアニメは何だったの?
「その頃、私、『デジモンアドベンチャー』がめっちゃ好きだったんですけれども、ちょうど再放送やってて。それをめちゃめちゃ見てて、あと何観てたかなぁ『奇面組』とか見てました」
 『奇面組』なんだ。
「あと、お父さんの部屋にも漫画がいっぱいあって、うち親がもともとオタクなんで『かぼちゃワイン』がすごく好きで、超読んでました」
 そんなアニメや漫画が君を癒してくれていたわけね。それで、その後、東京に出てくるの?
「そう、やっぱりあの、一番その頃ハマっていたのは、バンドとか音楽だったんで、表に出たい気持ちはずっとあったんですよ、ちっちゃい頃から。目立ちたがり屋ではあったんで。でもそのいじめられたりとかしちゃって、なんか、そういうのって嫌われるんだなって思っちゃったから」
 目立つと嫌われる、って思ってたんだ。
「そう、嫌われちゃうんだなと。でもエンタメには関わりたかったから、イベントスタッフの学校に行くって決めて、その学校に行くために、上京しました」
 どこに行ったの?
「日本工学院です。八王子の学校に行きました」
 その時はどこに住んでいたの?
「その時は、相模原の橋本です」
 まぁ八王子の工学院には近いわな。
「そうです二駅とかで行けるとこでした」
 橋本かあ。でも終着駅だから便利っちゃ便利だよね始発もあるし。
「そうですね京王新線の終点ですからね」
 それで、どうだったの東京に出てきて?
「凄い楽しかったです。その、やっぱり芸術系の学校なのもあって、みんなそれぞれの趣味に一生懸命だから、否定はしてこないんですよ。「あーそんなんもあるんだね」みたいな感じで。だからすごい生きやすくて、ビジュアル系好きな子もいれば、テニスの王子様とか、若手俳優のミュージカルが好きな子もいて、ジャニヲタも行ってみたいな、女の子が多いしやっぱり」
 ああ、そうなんだ。
「はい。それで、バンドやってる男の子とかもいて、すごい楽しかったです」
 それは何年ぐらい行ったの?
「2年です」
 それで、20歳になりましたって感じなの?
「そうですね、21になる歳で終りました」
  その学校は就職の斡旋とかしてくれるの?
「してはくれるんですけれども、そこでまた私のややこしいところは、高校の時に、アニメを見たりとかしている間にメイド喫茶がすごい流行ったんですよ。「あーメイドさんやりたい私も」と思って、メイド喫茶なら、目立っても受け入れてもらえるんじゃないかと思って。絶対メイドをやろうと決めていたんですね。上京したら」

つづく


 

木野崎菖 インタビュー のつもりが対談みたいになってしまった。聞き手、じんのひろあき。
 今どこにいるの?
「いま家に着きました」
 あれ、いつ引っ越したんだっけ?
 「三月の二十一日ですね。たすいちの小屋入り一日目に引っ越しました」
 笑。あほか!
「もうめっちゃ大変でした」
 当たり前だよ!
「劇場でみんながタタきして、建て込んでいる時に、あやめちゃんもこれからバラして建て込んでくるんだね、いってらっしゃ~い、行ってきます! って引っ越しました」
 なんでまた、その日なの?
「いや、四月の頭で、前の家の契約が切れることになっていたので、三月中に引っ越しとかないとなって。でも、三月はもう集中稽古とか始まっちゃってたんで、逆に、小屋入り一日目なら私がいなくても何とかなるんじゃないかと思ったんです!」
 すごいエアポケットだったんだね。
「もうここしか! ってなって。引っ越しました」
 そうか。どうですか今回、稽古に参加して一年ぶりのじんのさんの現場は?
「ああ! なんか、ちゃんと(じんのさんと)おしゃべりができるようになったのと」
 え? どういうこと?
「いや、前は緊張感とかもありましたし…」
 うそつけ!
「ほんとですよ! なんでですか! いや、でも今は緊張感がないってわけではないんですよ」
 うん。
「なんでしょうね、なんか、そう、じんのさんと、どう話していいかわかんなかったところがあったんですよ、前回は」
 前回って一年前の『櫻の園2』の初演の時ね。
「そうです」
 そうなの?
「はい」
 私はふてくされて、ずっとずっと稽古場の隅で、私に聞こえるような独り言を言っていた記憶しかないんだけど。「放置されてる~」とか「演出されない~」とか。
「え? 言ってました?」
 言ってたよ!
「えーそれはみっちゃんさん(二宮咲のこと)が言ってたのかなと思ってました宣伝で」
 違う、違う、言ってたよ稽古場で、私はっきり聞いたもん(笑) でさぁ、益子の稽古見てるときに、「益子、今の良かったから、それまま本番でもやってね」って言った、君が初めて「私、じんのさんの気持ちがわかりました。今、意見が合いました。私も今の益子さんいいと思いました」て言ってたんだよ。
「えー! 全然記憶にないです」
 言ったんだよ。
「ああ、あれですよね、益子さんのセリフがぐずぐずになった時ですよね」
 そうそうそうそうそうそう。
「(笑) うねうねしたやつですよねセリフが」
 そうそうそうそう。ああれいいよねーとか言って、あの時二人で笑い合ったのが、初めてコミニケーションが取れた瞬間だったと思うよ。
「え、私、わりと、何か見ながら、あー、じんのさんが言ってるこれが良いのわかる! って思ってることいっぱいありましたよお!」
 なんで今、半分キレ気味に言ってるの?
「そんなことないですよ!」
 放っておいたわけじゃないんだよ、言わなかっただけで、それなのにさぁ。
「うん、なんか、うーん、なんていうんでしょうね、でも、じんのさんの、 やっぱりいろいろ、独自の方法とかあるじゃないですか。台本読むなとか、人と芝居するなとか」
 あと「よーい、はい!」って言って始めないとか?」
「そうそうです。なんかそういうの、一通り稽古場にいて、結構、じんのさんの近くで見てることが多かったので、それで、だいたい一通り見て、あーなるほどこういう感じかな! って言うのを掴んだつもりでいたんですけれども、今回、稽古場に行ってみたら、いろんなことがもう既に変わっていて」
 何が? 何が? どんなふうに変わっていたの?
「いや、なんでしょうね、うんでも、今回、方向性をちょっと変えたじゃないですか?」
 変えたね。メソッドを変えた。
「なんかそういうところが……もちろん同じところもあるんですけど、今回もう一回やるなら何か私が、こう、いろいろ、変わった状態で現場に行かないと一年前と同じようになってしまうのかな、と思っていたんですけれども、現場に行ったら、じんのさんがものすごく激変してたんで (爆笑)」
 なんでそんなに笑っているの?
「いや楽しいなってって」
 どう激変していたの?
「なんでしょうね、えと闇から、光に変わっていたというか(笑)」
 はははは(笑) 前は闇だったの?
「闇でしたね結構。闇っていうか、つかみどころがなかったんで、どっちかっていうとなんでしょう霧とか?」
 闇か光か、どっちかっていうと霧って…
「(爆笑 この辺ずっと笑っています)そうですね、霧でしたね。つかめないみたいな感じだったんですけど」
 それが、今回、光になっているの?
「ですね、相変わらずつかめない、視界が何かわーっとなってる感じではあるんですけれども。」
 何が、光に思えたの? 君が?
「えー! 現場の間雰囲気みたいなものも、そもそも光になった感じがするんです。」
 去年は現場も霧だったの?
「霧でしたよ」
 本当に?
「なんかみんな、わーって喉も使うし体も使うしみたいなシーンをいっぱいやってて、みんなヘロヘロしていて、あー皆さん! 大丈夫かあ、ってなってたんですよ。それがなんか霧って感じで」
 はははは(笑)これ、読んでる人は全然わからんだろうけど、ものすごくよくわかる。でも、今回の方が激しいんじゃないの、動きもセリフも。実は。
「ああ、そうですね。昨日、久々に稽古場に行ったら、とんでもないことになってましたね。途中から見たから、なんでこうなってるんですか? って聞いても誰も答えてくれないし(笑)」
 そう、そんなにね、ガソリーナの稽古場は優しくないんですよ。
「どういうこと? って思いながら一時間位なんかずっと激しい稽古を見てました」

つづく……

 


 

植野祐美 ロングロングインタビュー(聞き手 じんのひろあき ラインの電話にて)

 植野祐美はまず、どこで生まれたの?
「横浜ですね。生まれも育ちも横浜です。浜っ子です」
 浜っ子ってどんな時に「ああ、自分は浜っ子だなあ」と思うの?
「横浜市歌がすごく歌えます」
 横浜市歌? そして、すごく?
「横浜市歌を愛しているのが横浜市民なんで、小学校でも中学校でも、今月の歌にさせられてしまうくらいみんな歌います」
 両親も横浜の人なの?
「いえ、両親は全然違いますね、二人とも違うところから来て神奈川に来たみたいな」
 そして、お兄ちゃんがいるって言ってたでしょ?
「六つ違いです」
 六つも違うんだ。どうなんですか? お兄ちゃんがいる子ってのは?
「六つも離れていたんで、一緒に小学校とかは行ったことがないくらいなんですけども、でも、六つも離れていたら、お兄ちゃん優しいでしょ? といろんな人に言われるけど、そんなこともなく、ずっと喧嘩して育ったくらいでした。でも今は仲はすごくいいです。家族みんな仲がすごく良くて、みんなでディズニーランドに行ったりします」
 そこで大きくなり、幼稚園? それとも保育園?
「保育園ですね。共働きだったんで、生まれてすぐ0歳から入れられました」
 自分の中に保育園の影響ってある?
「ん…どうなんですかね、でも、結構早いうちからそうやってなんか、グループの生活してたみたいなんで、正義感が強い子だったらしいです。全然私は覚えてないんですけど、いじめられている子と仲良くするような子だったらしいですよ。(笑) いい子だったみたいです。卒園の言葉とか言ってたりしてたみたいで」
 卒業生代表!
「そういう感じです(笑)」
 そういうのって覚えているものなの? 卒園の言葉を言ったときの感じとか?
「断片的には覚えていますね、あーやったなあ、みたいな事は覚えてます。本当に断片的ですけど」
 一番自分の古い記憶って何になるの?
「ああ、それたまに考えるんですけど、一番あの、私今お父さんがいないんですけど、三歳位の時に亡くなっているんですよ」
 ああ、そうなんだ。
「だから、全然記憶が全くないんですけど、いっこだけ何か覚えているのが、保育園でお母さんとか来るのを待つじゃないですか、あれよく最後になりがちだったんですけど、最後で、お父さんが、迎えに来る瞬間を一回だけ覚えているんですよ。それが一番古い記憶かもしれない」
 なんか今、泣きそうになっちゃった。
「それだけしか覚えてないんですけど」
 それはどういう印象なの? 保育園の玄関のところにお父さんが居たみたいな感じなの?
「お父さんがそろそろ来るって言われて、先生と一緒に外で待っていたら、坂だったんですけど、お父さんがくる瞬間ですね。顔も覚えているくらい、その一瞬だけなんですけど。お父さんに関する記憶はそれしかないです。何か旅行に行ったことがあるとか、聞いたことあるんですけど、それも全然覚えてないです」
 それは三つの時に亡くなってるから三つの時の記憶だよね。
「そうなんですよだから、三つになったかどうか分かんないくらいの記憶ですね」
 すごいね。
「その前の記憶が定かじゃないんです」
 保育園で遊んだこととか覚えていないの?
「覚えてますよ。なんか痛かった記憶とかが結構覚えてます」
 痛かった記憶?
「保育園の坂を上ってくる途中、すごいコケ方をして、大泣きして先生に抱えられて、上がってたこととか覚えています(笑)」
 あ、そう。
「あとなんか、いじめられている子に、すごい活を入れた記憶があります、いじめられて、いじけてる子に「そうやっていじけてるからいじめられるんだよ」と叫んだ記憶があります」
 何かいろんなものと、その頃から戦っていたって感じなんだね。
「でも、そっちかよって感じですよね。いじめている子の方じゃなくて、いじめられている子のほうに言っていたんですね「あんたがそんなだから!」みたいな感じで。でも、仲良かったんですよその子と」
 それがじゃあ子供の頃の記憶なの。テレビ番組の記憶とかはないの?
「『アンパンマン』とか見てましたけど『しまじろう』とか。朝の番組。あとその頃ピコってのが流行ってて、テレビにつなぐゲームみたいなので、何かそれでめちゃくちゃやってました。英語のちょっとした勉強とかもあるやつでしたね」

 (注 ピコ セガ・エンタープライゼス(後のセガゲームス)が1993年に発売した幼児向けの電子知育玩具で、当時のメーカー希望小売価格は税抜16,000円[1]。1998年以降は当時のセガ子会社で玩具部門を担当するセガトイズに販売を移管した。2001年6月1日には同性能の改良機を発売するとともに機器名称をキッズコミュニケーション・ピコに変更した。略称はピコ(PICO)。タッチペンによる操作、絵本状のページが付いたソフトウェア、テレビ画面と絵本の連動遊び、テレビ画面を利用したお絵かき遊びを特徴とする。キャッチフレーズは「楽しく遊んで、知力すくすく」「遊びが学びの最初の一歩」など)

「テレビの記憶はないんですけれども、ビデオ見ていた記憶は結構あります。『くまのプーさん』とか」
 プーさんは好きだったの?
「『プーさん』好きでしたね。あと『101』(ワンオーワン)とか見てました」
 『101』は実写の方なの?
「いや、違ったと思いますアニメでした」
 『101匹わんちゃんね』。
「『101』(ワンオーワン)です」
 『101匹わんちゃん』だけどね。それはお母さんが買ってくれたの?
「そうですね、家に、いっぱいあってビデオが」
 じゃぁ、お父さんお母さんもディズニーが好きだったんだね。
「そう、だったと思います。だからディズニーも結構連れて行ってもらってて」
 ランド?
「ディズニーランドです」
 最初にディズニーランドに行った記憶ってあるの?
「最初はもうあんまり覚えてないです。でも、イッツアスモールワールドに五回ぐらい乗る女の子でした」
 あー、そうなんだ。
「ずっと乗ってるくらい」
 スモールワールドは好きだったの?
「スモールワールドは大好きで、ほんと何回も乗ってました」
 スモールワールドはいつでも乗れるもんね。私も絶対行ったら乗る。
「乗れるし、座れるし、空いてるんですよ。すごく空いてるから。何回乗ったっていいみたいな。楽しいし。可愛いし、みたいな。まだ、ジェットコースターが嫌いな時からずっと、乗ってました」
 ああ、そうだジェットコースターとって乗せてくれないもんね身長足りないと。
「そうですそうです。身長が足りてくるとお兄ちゃんに無理矢理載せられるようになりました。ちょっと足りなくても、靴の中にティッシュとか詰められて」
 シンデレラの悪いお姉さんみたいだね。
「お兄ちゃん、ほんとに信じられないんですよ。大泣きしてるのに乗せたがるんです」
 そして、小学校に上がってくわけですけども、印象に残っているのは、ディズニーの『プーさん』とそういう感じのものなの?
「見ていたものはそうですね」
 なんか、あれがあったから今に繋がってる、的なものはないの?
「まぁディズニーはさておき、その頃はまだ普通でしたね。なんか全然関係ないかもしれないんですけど、保育園の時に、劇をやってたんですよ。キリスト教の保育園だったんで、イエス様の誕生、マリア様の一日みたいな。それを学芸会みたいな感じで、それでお歌も歌うみたいな。その時に、マリア様の役を決めるのがあって、私すごいマリアさんもやりたかった記憶があるんですけど、歌があまりうまくなかったので、いろんな役を転々として最後に、天使の役をやったと言う。その時になんか、マリア様役をやった女の子がすごく羨ましかったのを覚えています」
 受胎告知じゃなくて? だって、キリスト教系の学芸会の花形と言えば受胎告知なんじゃないの?
「ああ、そうですね。そうだそうだそれだ」
 なんかさー、最近演劇やってる人と話をすると、幼稚園とか保育園がミッション系で、受胎告知をやったって人がやたらいるんだよね。
「その悔しい記憶はありますね。覚えてます」
 その時先生たちに直訴しなかったの?「私この役やりたいんです!」みたいな事は?
「オーディションで、一生懸命アピールしたんですけど、駄目だったような気がする。すごい声が綺麗な子がいて、その子になったなぁと思って」
 その時は負けたなと思ったの?
「あー、声が綺麗だったらなぁと思いました」
 その頃、声にコンプレックスはあったの?
「特にはなかったですけど、自分の声がどんな声とか全然思ったこともなかったので、歌を歌うときに何か、やっぱりその子がうまかったんですよ。綺麗で、私はそんなふうに歌えなかったから、くらいのあれですね。記憶的には。綺麗に歌えたらよかったのにみたいな」
 でもその辺はあれだね、今にも通じるものがあるよね。君の何かの根本の部分だよね。すでにそこで。
「悔しかった」
 その後、小学校に入って、芸事をやってみようと思ったのが、きっかけがあるわけでしょ。
「小学校二年生位の時に、テレビに出たいと思って、友達がテレビに出てて。出ててっていうか、お芝居とかじゃないんですよ、なんかニュースか何かにって言うそれぐらいのものだったんですけどそれを見ててなんか、うらやましいと思って、いいなと思っていたら、家に児童劇団の勧誘の葉書が来て、たぶん、家だけじゃなくて、みんなのところに来てるんですけど(笑)お母さんに、これやりたいって言ったのが一番最初ですかね」
 そん時お母さんは何て言ったの?
「大変だと思うけど、やりたいんならいいんじゃない。みたいな。とりあえず受けてみるみたいな。割と、すんなり、結構、習い事をさせられる家庭だったんですよ。その頃すでに、体操もやっていたし、よくあるスポーツセンターみたいなところで、小さい子がエアロビみたいなことやったりとか、何かそういうのもやっていて、ピアノとかもやっていて、何かそれが複合版みたいな感じで、それじゃあやってみるみたいな、土日とかも結構お母さん忙しかったんで、遊んであげられないから、行ってもいいよねみたいな。それで、そのまま入ることになりました」
 それが児童劇団。
「はい、それが児童劇団でした」
 どんな感じだったの? 児童劇団は? そもそもだって、テレビに出ようと思ったわけでしょう?
「最初はもう、テレビに出ようと思って、なんでですかね。今となってはですけど、目立つことが好きだったんですよね。学級委員とかもやっていたし。そういうことが好きだった。で入ってみたら、いろんな人がいましたね、かわいいとかじゃないんですよね、児童劇団だから」
 かわいいとかじゃないんだ。
「かわいいとかじゃないんですよ。個性、個性、個性みたいな。なんか変な子もいっぱいいたし。我が強い子の中で育ち、逆に周りの個性が強すぎて、どんどん内に閉じこもっていくみたいな」
 それって覚えてるの? 衝撃を受けた先輩というか同輩というか、こんなことに対してまさかこんなリアクションを取るみたいなこと。
「そういうのはあったかなぁ?」
 でも、びっくりしたわけでしょ。
「びっくりしました。一緒に入った女の子が、結構強い女の子でこんな風にはなれないなと。しょっぱなから思ったんですけど。その子は結構活躍して『アニー』とかも何回も出たりしてました。その時も、私は自己アピールみたいなのがあまり上手じゃなくて、私がやります、私がやりますみたいなことができないような子だったので。もともと引っ込み思案だったから、お母さんもそういうところに入って、ちょっとでも自発的な子になればなと言う気もあったらしいんですけど、それもあまりうまくはいかず、オーディションとかも、あんまり前に出れるようなタイプじゃなくて。なんですけど、でも、負けず嫌いだけは人一倍あって、ほんと誰よりも、このクラスの中で一番上手くなってやろうとか、すごい思ってましたね。で、先輩とか、上の人とかとも、一緒にやったりするんで、その中で一番うまい人の真似を一生懸命していました。先生とかも」
 そうだね、植野祐美はコピーの能力は高いよね。
「そうですか。何かでも真似することにほんとに一生懸命でした」
 でもそれが一番早く上手くなるよね。
「ああ! そうかもしれないです。実際は。どこから真似してやろうとか、ずっと思ってましたね。角度まで全部やってやろうと思ってました。コピー、コピーって。それで一番うまい人を真似するじゃないですか、それで、真似を仕切ったなと思ったら、じゃあ次は先生の真似をしてやろうとか、なんかもそんなんばっかでした。そういう気持ちだけは本当に強くて」
 それは結果よかったんじゃないの。
「そうですね」
 コピーは重要だよね。
「そうですね。それは思います」
 それで、下積みがあったの? 入ってみて、初舞台っていうか、初露出はいつだったの?
「まぁ、結局その仕事自体はやってないんですよ。ああいうところってお母さんがすごくて、お母さんがどんどん出してください、どんどん出しくださいてみたいなタイプのお母さんが多かったんですけど、うちのお母さんは、いい感じに放任主義だったので。別に仕事なんかしなくても、レッスンだけ受けてればいいみたいな位な感じでした。だから、劇団の中でやるミュージカルみたいなのに一生懸命出てましたね」

つづく…

 

 

植野祐美ロングロングインタビュー その2 2017/04/17 

 それに一番最初に出たのが?
「小学校四年生でした。四年生になってすぐ」
 二年生で入ったんだっけ?
「二年生の秋に入って、出たのは四年生の最初」
 じゃあ結構時間がかかったんだね。
「そうですね、最初のほうはもうレッスンだけで。あと合宿が一年に三回あって。四泊五日の合宿なんです。私、合宿が大好きで、毎回行ってたんです。行くかどうかは自由だったんですけど、お金もかかるんですけど、張り切って行ってました。合宿大好きだったんですよ」
 で、初めての役をもらうわけだ。
「それで『夢から醒めた夢』に出て」
 それで、良い体験だった? 『夢から覚めた夢』は?
「そうですね、すごい良い経験でした。そこで、初めて、ちゃんと本物を見に行こうと言うことで、舞台を見たのが、多分人生で初めてだったんです」
 それが『夢から覚めた夢』だったの?
「そうですそうです『夢から覚めた夢』を見たんです。やるから見に行こうと言うことで」
 それはやる前に見に行ったと言うこと?
「やる前に見に行きました」
 本物はどういうものなんだろうと言うこと?
「はい。ちょうどやってたんで、見に行ったら、なんて素敵な世界なんだと思って……」
 やっぱり違ってた? 想像していたのと? 自分たちがやっているのと。
「いや、全然違いました(笑) いやもうもうなんか全然別物でした。なんか、すべてがキラキラしてました」
 全てがキラキラ。
「そっからも、劇団四季ばっかり見に行って、小劇場とかの全然知らなかったんで、もう劇団四季しか見に行ってないです(笑) 新作が出るたんびに行くみたいな、そんな感じでした」
 その頃、どんなのを見てたの? 『ライオンキング』を見て『夢から覚めた夢』を見て『ライオンキング』を見たら、全然違う演劇だわー! って思わなかったの?
「違いますね、もちろん。でも、それはそれですごい面白かったんですけど。ああ、だけど、『ライオンキング』は私はそこまでは凄いと思わなくて『キャッツ』が良かったんです。『キャッツ』も何回か見に行きました。あと『美女と野獣』だ。多分一番見に行ってるのは『美女と野獣』か『夢から覚めた夢』ですね。あとは『ブラックコメディ』とか、あれすごい好きだった。あれはミュージカルじゃないですよね」
 ストレートプレイだね。『ブラックコメディ』渋いね。

※注『ブラックコメディ』
 『エクウス』を代表作にもつイギリスの劇作家ピーター・シェーファー(2016年逝去)が描いた、爆笑に次ぐ爆笑の傑作喜劇(じんの注 そんなでもないと思う)主人公は無名の若い彫刻家。ある晩、彼は留守中の隣人宅から数々の調度品を無断で借用。
 フィアンセの父親と、大富豪の美術コレクターを自宅に招き、これらの品々が自らの作品であるかのように仕立て、一挙に富と愛する女性を手に入れようと企てる。
 しかし、突然停電が起こり、次から次へと招かざる客が訪れて……?!
 一世一代の大勝負の日が、たちまち悪夢へ。このピンチ、彼は切り抜けられるか?
 物語の要である停電というシチュエーションを、作者ピーター・シェーファーは“明暗逆転”、つまり、電気がついている時には舞台は暗く、停電になると照明がついて明るくなるという特異な演出で表現。
 この大胆な演出によって、暗闇の中で次々と起こるハプニングや、隠された主人公の本音や嘘が浮き彫りになり、滑稽なまでに明るく照らし出される。
 
 じんのはこれを加藤健一事務所の公演で見ている。

「『ブラックコメディ』はミュージカルじゃないけど好きでした。『春のめざめ』とかもすごい好きでした」
 『ブラックコメディ』を好きで見てるっていうのが、おもしろいね。
「『ブラックメディ』よかったです。また今度やるみたいなんですけども、見に行こうと思って」
 その劇団四季を見に行っているのはいつまで続くの? 児童劇団&劇団四季好きは?
「劇団四季好きはまだ続くんですけど、児童劇団自体は中学校三年生で終わるんです。その劇団の附属高校みたいなのがあって、そこに進もうと思ってたんですよ。私、当時はあまり頭が悪い方ではなかったんです」
 遠回しな言い方だな(笑)
「え、じゃあ、あの……結構成績がよかったんですね。態度が良かったっていうか……それでその高校に入るので、オール3あればいいよって言われたんです。ああ、オール3かと思ったんですけど、まぁまぁ、大丈夫と思ってたら、私の先輩ですごい女の子がいたんです」
 すごいって?
「オール1なんです」
 すごいっていうのはそっちの方か!
「その子の素行がすごくて。中二にして、もうだいぶギャルが出来上がってるみたいな子だったんです。その子が、高校に進学するかしないかで、高校側が、やっぱりお金欲しいじゃないですか?」
 (笑) お金欲しいじゃないですか、まあ、高校も最終的には商売だからね。
「その高校が、そのオール1のギャルの先輩を一生懸命入れようとするんですよ。それ見て興ざめしちゃって、いや、いくら好きなことができるとはいえ、こんな先輩を入れるのかと思って、で、もういいや別のところに行こうと思って。それとは別に私の結構仲が良いお姉ちゃんに、演劇、ミュージカル部がある高校に入った人がいて、その人たちの公演を見て、公演自体の内容は全く覚えてなかったんですけど、ホールがすごい素敵な高校だったんですよ。なかなか県立の高校には、良いホールってないじゃないですか思っててこのホールでやったら素敵だなと思って、そこに決めたんです」
 決め手はホールだったわけね。
「そうです。成績はちょっと足りてなかったけどがんばりました。でもまぁ入れたんですよ。その高校がまぁ結構特殊な高校だったんで、面接に、個人面接と個人面接とディスカッションを見る高校で個人面接で、オーディションだと思って受けて、一応ここで歌って踊らせてくださいって言ったんですよ」
 それは何を歌ったの?
「中学校二年生にやった『オズの魔法使い』でもらった役の、歌とダンスを披露しようと思って、意気込んで持って行ったんですけど「いや、ちょっとそういうのは見ちゃいけないんで」って言われて、断わられました」
 見ちゃいけないんだそういうのは。
「なんかそういうのダメなんでって言われて。でも意気込みはわかりましたって、言われて」
 それは中三ってことだよね。
「中三ですね」
 それは超かわいかったろうね、中三の植野祐美が。
「でも、あんまり頑張っても結構苦手だから、苦手なのに、結構頑張って言ったのに断られちゃって」
 向いてないんだねいろんな意味でアピールに。
「そうなんですよ」
 アピールの神様に見放されているんだね。
「もうそんなだったんですね」
 それは『オズの魔法使い』の何の歌なの?
「ルイーザっていう役をやっていたんですよ。悪い魔女がいて、その手下みたいな、女の子がいて、その中の歌でやったんですけど、結構お気に入りの役だったんですよ、出番的にはそこまで多くなかったんですけど、一番なんかそのミュージカルの中で、女の子らしくて、すごいチャーミングな女の子だったんで、すごい張り切ってやってたんですけど」
 アピールコンプレックスの溝が深まったんだね。
「ダンスもそうなんですよ、ダンスのポジションを前にしてもらうように。三列あったら、やっぱり一番前の真ん中がいいみたいな。いつまでもありましたね。今でもですけど」
 今でも? それは思うの?
「ありますね。やっぱりダンスって、わかりやすく実力主義なんで」
 うんまぁそうだね。
「だから、大学の時とかも、結構、群舞が主流で前列にしてもらうためには、体動かさなきゃいけないので結構一生懸命やったり、後は、レッスンも、前の方でしっかり「やる事やるぞ」って言う意気込みを見せないと、位置を決める時になった時とか、出番の多さとかにも関わってくるし、一所懸命前陣取って、みたいな感じでしたね。でもそういうのすごい苦手なんですけど」
 苦手だよね。
「そうなんですよ」
 すごい苦手だよね。
「そうなんですよ。だから、嫌なんですけど、でもそれしないと、いけない社会だったんで。頑張ってきましたね」
 そうなんだ。苦手だよねほんとに。
「ほんとに苦手なんですよ。いつまでたってもそれは克服しなかったです」
 絶対譲っちゃうもんね。植野祐美はそういう時に。
「譲りますね。ずっと譲って行きたんで。結構、学級委員とかも、自分からやりたいって言えないタイプなんです。周りからの推薦が欲しい。だから何か、自分から「はい、はい! 私がやります」みたいなふうになればよかったのに……って、もういつまでも思いますね。それが何も感じない子なら、いいのになーって。今、思うと譲りっぱなしだった人生だなぁと。だから記憶に残っているのは譲っている記憶なんです。譲りたくなかったのに譲ってると言う。そういうのが結構ありましたね。もう致命的なんですよほんとに」

 

つづく

 


 

植野祐美ロングロングインタビュー その3 2017/04/17 

 でもそしたらあれだよね、じんのさんのガソリーナってそんなの全然関係なく、進んでいくいくからびっくりしたでしょう。
「そうなんですよ、もう、本当に……」
 全然関係ないよね。
「全然関係なくて。超ありがたかったです」
 いつの間にか何かが緩やかに決まっていくよね。
「そうなんです。ほんとに『役決め』とかないですもんね。やんないですね「役の発表です」とかない。じんのさんが「もう、この役で行こうと思っています」みたいな「これはこの二人でやろうと思うんだ」みたいな感じですよね」
 そういった意味では全然アピールしなくてもいいもんね。
「ほんとそうですよね。居やすいです」
 アピールいらない。
「いらないですね。関係ないですね。だからすごい居心地がいい」
 あーそうなんだ、居心地がいいんだ。そんなの植野祐美、今まで私に言ったことじゃいじゃん。
「『役決め』オーディションとか。よくわかんないです。やりたくないです。ほんと言うと」
 そうか、そういう子は大変だよな。
「でもそういうのが上手い子って本当にいますからね」
 ああ、いるねぇ、いるいる。
「そういうの真似しようと思って、見てても、もう根本が違うから、真似できないんですよ。だから、観察だけはとにかく上手くなったと思うんですよ。ちっちゃい頃からそういうのは。見て、こういう風になれたらなといろいろ見て考えてきたんですけれども、でも、なれないものはなれない。でもそれも、なんか、なりたかったか? と聞かれたら、ちょっとわかんない自分もいるんですけれども」
 それはよかったんじゃないの?
「そうですね、今んところは」
 そうだね目立ったもの勝ちとか全然関係ないから、じんのさんとこは。
「まったくまったく。今話してと思いました。確かに『役決め』ないなと思って」
 目立たなくても、言われて、言われたことをこなしていけば、それなりの何かが、降ってくる感じでしょ。
「もうやったもん勝ちですからね。ガソリーナは」
 あーそうだね、やったもん勝ちっていうのは大きいかもね。
「素晴らしい世界ですよほんとに。そうあって欲しい。そうであって欲しい」
 切ないねなんかね。あーそれで何かにつけて、君の口から「私はアピールが下手だから」「アピールが下手だから」っていう言葉が出るんだね。
「そうですね、本当に、ちっちゃい頃からコンプレックスはそこですね。そこばっかりですね」
 アピールしなきゃ、っていう。それをやらなければいけないと言う強迫観念があるんだろうね。
「それで悔しい思いをしてきたっていうか。ほんとそういうのばっかりやってきたんで」
 でも、それってあるでしょう、ちゃんとやってれば認めてくれる世界が来ればいいのにと思ってるわけでしょう?
「本当はそういうことじゃないですか。でもなんか、結局何かそう信じてやってきたんですけど、劇団とかは、年功序列が多かったりとか、結局何かそこでいい思いはしてこなかったので」
 でも、海外とかいくとそれが当たり前の世界だったりとかするわけでしょう? そうすると違うんじゃないの? 日本だからやりにくいんじゃないの? 
「ああ、それはありますよね」
 私もすごくそれはあるんだもん。海外行くとバンバン自分のこと喋るもん。だって、黙ってると伝わらないし。
「ああ、そうですね」
 だから海外に行くとめちゃくちゃ自分のアピールを私はするんだけれども、日本ではあまり言わないね。自分のことを自分でね、それが客観的で正当な評価だったとしても、ダサって感じがどうしてもしちゃうじゃない?
「ダサイ、そうなんです。喋るより、やってみせたほうがと思うんですけども」
 植野祐美にとって女の子らしいってやっぱり大事なの?
「大事です。おっきいですね」
 女の子らしくありたいものなの?
「ありたいです。だから、私が男役やるとかちょっとよくわからないんですよね」
 そうなんだ(笑) 
「男役は男には絶対勝てないから、私がやってもしょうがないと思うんですよ」
 だけど女の子役だったら負けないようにしたいと。
「そうです。女の子役もですね、かわいい……かわいいっていうのもなんか難しいんですけど……」
 でも、この前のさぁ、あれはどうなの?おかもと君と君でやった『砂糖菓子』は? あのおかもと君がやった女の子らしさは? 『砂糖菓子』…あれ負けそうになってたわけでしょ?
「(笑)負けそうになりましたね。あれは…何か違いますね。もう全然違う」
 あれはヤバかったんじゃないのそういう意味では?
「やばかったですね。あれ可愛かったですよね、おかもとさん。いや、なんか(笑) 可愛いと言うのは違うなぁ。女の子らしかった」
 そうだよね。
「女性らしいとかと言うのともちょっと違う」
 やばかったね。
「やばかったですね」
 そういう女の子らしいのは植野祐美にとって大事なんだね。
「大事です。なんか女性的な、女の子が持っている女性的なところって、綺麗にすればするほど、本当に見ていたくなるというか、素敵だと感じることが多いので、それは絶対ものにしてやろうと、常に思うんです。まぁ難しいですけど。舞台って何か人をすごく魅力的に見せる力があると思うんですよ。でも、なんかそういうの、結構うまくいってないこともよくあるじゃないですか、それを見ていると、辛くなってくるんです。私も良いものをいっぱい見ているわけではないので、どっちかって言うと、同じような子が同じようなことをやってるの付き合いで見に行くことが結構多いじゃないですか。そういうのを見ていると、あーこれは駄目だなと、反面教師は結構多いです。ああ、このことを多分書かれちゃったら、嫌われちゃう。みんなから。呼んでくれなくなっちゃう(笑)まあいいですけど」
 じゃあ、あれだよかったんだね、じんのさんみたいに女の子可愛く見せることに一生懸命になる人のとこに居て。
「いやほんとに良かったと思いますね」
 あと前から言ってる、女の子の目線から見ても可愛い感じになって欲しいよね。そういうのってあんまりないからね。
「あー、そうですね「こういうのは男が好きなんだよ」ってよく言われることがあるんですけど。それじゃないなあ、と思うんですけど」
 そうじゃないもんね。逆に言うと、私が「こういうのは男が好きなんだよ」っていう感覚を使い分けができるともっとお客さんの間口が広がるとは思うんだけど(笑)そうならないから私は。
「そうなんですね」
 でもほんとヤだよね可愛くないと。
「嫌ですね。可愛くなりたいと思ってなければ意味がないですからね」
 そうそうそうそうそう。思わない人も多いからね。あの、コンプレックス持ってると余計に。
「そうですね」
 どうせ私はとか……めんどくさいことなるからね。
「ああ。そうだからこそホントはもっと何か研究する必要があるんですけどね」
 そうだよね。研究したり試したりとかね。
「ほんとに」
 なるほどね。中学生ぐらいまで来たね話は。
「やっと中学生です」
 まあ、徐々に進めていけばいいんで。大学の話はじゃあ、次で。最近、ホームページとか、意外とみんな読んでくれるようになってきてるからね。
「そうですね。楽しんでくれてる」
 とりあえず、いろいろ知ってもらって、アフタートークとかだけじゃなくてね、知ってもらわなきゃいけないんで。
 つづく……


 

双葉ちゃん、インタビュー 2017/04/05
 (聞き手は例によって、じんのひろあき)

 今回、出演するにあたっての意気込みとか、多分まだわからないじゃない?
「そうですね」
 何やるかって言っても、まぁやるのは『真(チェンジ)』をやってもらうんだけれども(笑) それはさておき、前回の反省、とか、稽古場を振り返ってとかから話していってもらいたいんだけど。
「ああ、はい。そうですね。前回の反省」
 前回の出演のきっかけから、で、まず声かけられたわけじゃん。芝居を見に来たじんのさんに。『ShortCuts2』ってのをやるんだけど、出ませんか? って。
「そうですね」
 そん時はどんな感じだったの?
「素直に嬉しかったですね」
 じんのさんの事は知ってたの?
「なんとなく……状況というか、他の人と話してる様子から、演劇関係の人だろうな、と、それで声かけていただいて、そうですね、嬉しくて、最初、戸惑いもあったんですけれども、二人芝居自体も初めてだったし」
 まずその時、ちょうど『櫻の園2』ってのを阿佐ヶ谷で再演しているから見にいらして、って言ったんだよね。
「あーそうですね」
 どんな感じだったの『櫻の園2』を見て。
「衝撃を受けました。やっぱり劇全体もなんですけれども、トイレットペーパーが飛んでるのを、すごい楽しいなと思って(笑) 一幕の休憩前までは、むっちゃ楽しいと思ったんですよ。そしたら二幕目になって。女子高の、何とも言えないその、微妙な、人間関係がうまく描き出されていて、あーすごいなってなんか、ほんとほんとそのまま自分の学生時代にあったような、雰囲気とか似てる部分があるなと感じたんで、あーすごいなって。で、それをそれを男性の方が書いているというのが、すごいなぁと思ったんですけど」
 それで終演後にその人に会ってみて……
「『櫻の園2』を見たすぐ後は、書いたのがこの人なのかと驚いたんですけど、その後、『ShortCuts』の稽古で、じんのさんとお話をしているうちに、女子の感性の部分がやっぱりあるなーって思って、あーこの人書けるなと思いました。ああ、ほんとこの人、女子だなっていう」
 どんな時に思うものなの?
「なんて言えばいいんだろう。なんか。ぱっと何かを見たときに、目をつける部分とか、そういうところが女子っぽいなと」
 なるほどね(笑)
「あー、女子だなって言う感じで、そうですね、話をしていても、女子だってわかるところがすごいたくさんあるんで(笑)」
 それで『櫻の園2』を見て、次に似てるようで違ってるようで似ている今度は短編の二人芝居の稽古に入りまして……二人芝居は初めてだったの?
「そうですね、二人芝居は初めてでしたね」
 短編は? 
「短編はありました」
 だけど、まず、作り方はもちろん、稽古場そのものが違っているじゃないガソリーナって普通と。
「全然違いますね」
 まずなにが驚きだったの?
「やっぱり自由に、いきなり始めていいよって言うのが、すごい驚きでした」
 始める時に「はい!」って言ったり、手を叩いたりしないところだよね。掛け声をかけない。
「そうですね、なんか、勝手に始めていいよって言われて、最初は戸惑ったんですけれども、逆に、今はそっちの方が、楽にできるなっていうのがわかってきたって感じです」
 勝手に始めていいよって言うのは、いつがいいんですかとか、どうやって始めればいいんですかとか、聞いてくる人もいるから。あれは戸惑いがあるものなの? 相手と目配せしたりとかしてタイミングとか計るものなの?
「最初はちょっとありましたね。ど、どうすれば……みたいな。でも、だんだん、いつの間にか自分が台詞を喋ったら、相手も入ってくるみたいな感じで、始まって……なんかそっちの方が、今まで自分ができなかった形でできるんで、演技もちょっと違ってきたりとかしたなぁっていうのは、自分では思っていますね」
 あと他には何か変わってびっくりしたことあるの?
「やっぱり褒められるのが、なんかすごいむず痒かったですね(笑)いいの? いいの? みたいな感じでした」
 それは稽古場で言ってたよね他の団体から来た男の子たちまで含めてみんな。「この稽古場は褒められる!」って! 逆に私もびっくりしたくらいなんだけど。
「そうそうそうですね」
 みんな他の現場では褒められないものなの?(笑)
「褒めてもらえる時もあるんですけど、なんかそんなじんのさんみたいに全肯定まで行かないんですよ。そのまま、あー、いいね、いいねって言われるのが、なんかすごい不思議な感じでした」
 いいねって言うよね私。あと、かわいいねえってしょっちゅう言う。
「そうですね。かわいい!って稽古で言われて、もう、ほんとに最初はわーって感じでした」
 そうなんだ(笑)
「かわいい! わー!ってなりました」
 でもお世辞では言ってないじゃん。それはわかるでしょ。
「いや、そう、そうなんですよ。そうだからこそ余計に「わー!」ってなるんですけど」
 でも、ダメなときはダメって言うし。
「そうそう、ダメなときはちゃんとダメって言ってくださるんですけれども……」
 すごいダメって言うよねダメな時は。落差激しいよね。
「すごいダメか、すごい良いか、どっちかなんですよね。わかりやすいと言えばわかりやすいんですけれども」
 わはははは(笑)
「そこにたどり着くまでがちょっと大変だったりするんです。あーこんな感じなんだっていうのが分かるまではね」
 じゃあ、ダメって言われたときのショックは大きいものなの?
「まぁ大きいんですけれども、でもなんか、それでもいいねって言われたいから私としては。がんばりますけど……」
 面子も良かったよね、あの時も。
「あー、そうですね、大体読みというか、初めて読んだ時から、素直に見せられました。時々、劇とか見てると、うまいけど、微妙にちょっとこの人ではないなって言う配役があったりとかするじゃないですか」
 あるね、あるある、それはある。
「そういうのを感じませんでしたね。本当に、なんだろう。総括すると自然体で全員が稽古場に居れたような気がしますね」
 基本的に私を信頼してくれてる人を集めてるからね(笑)
「あー、その感じですかね、そうですね。すごいやりやすかったです」
 たいてい、顔合わせってみんながみんな腫れ物にお互いが触るような感じで居るじゃない?
「そうですそうです、そういうのありますよね。なんかお互いが、牽制しあうじゃないけれども。探り合ったりというか」
 自己アピールをどうすうればいいのか? とか、空気の読みあいがね。
「様子を見て……周りの。最初、やっぱり緊張はしたんですけど、でも溶け込むっていうか、いつもの自分の自然な感じに戻れる時間がすごい早かったと思います」
 演出席が特にないっていうのも、普通の稽古場と違うと思うんだけど。
「あー、それはそうですね。それはすごいやりやすかったなっていうか、そう言われると、そうなんですよね、不思議な空間でした」
 真ん中にいないもんね私。
「そうですね」
 どっかから見てる。あと雑用やってたり……
「そうですよね。なんかいろんなとこにいらっしゃるなと思いながら(笑)」
 後は稽古始まってから、あれだよね、双葉ちゃんが離陸するっていうか、役をつかむまで時間掛かっちゃったよね。
「そうですね」
 あれは辛かった?
「いや、辛かった、って言われたら、辛かったですね。できたらほんとに一瞬で出来たんですけれども」
 あれなんだろうね、一瞬でできちゃうって。
「何なんでしょうね。いやほんと、それまでは辛かったし、道筋も本当に初めてのことだから、どこ行けばいいんだろうとかって。でもいい経験だったなとすごく今は思ってます」
 大変だったね。
「たぶん、じんのさんの中では見えてる何かがあるんだろうなと思いつつ、その人の本質の何かなんですよね、きっと。役者が自分では見えてない何か。そうそれを役者が自分で求めなくちゃいけないから、いやあ、だから、まぁ辛かったですけど、楽しい経験ていうか楽しかったです」
 離陸するまでは大変なんだよねほんとに。
「そうですね」
 で、上がったら全部できちゃうんだけどね、不思議なことに。
「そう、そうなんですよね。いっこいっことかじゃなくて」
 あ、あと、演出の言葉として「人と芝居するな」っていうのはどうだったの?
「いや最初、何を言ってるんだろうと思ったんです(笑)だって今まで経験してきたことと正反対っていうか真逆のことを言われるので。でも、やってるうちにだんだんわかってきたって。これか! っていう感じがしましたね。で、それで、この前の『ShortCuts3』の稽古場に見学に行った時、もう一回やらせていただいたじゃないですか『その男、凶暴につき』を」
 (注、双葉ちゃんが来た時に、ちょうど『その男、凶暴につき』の稽古をしていたので、ちょっとやってもらった。人がいないから代役を頼むのではなく、別の人だとどうやるのか? 前はどうやっていたのか? を見せてもらったりすることもよく私の稽古場ではやります)
「あの時、久々にやって、でも、あー! できたっていう驚きはすごくありましたね、自分の中で。三ヶ月たってもできるって言う」
 全然できるよね。
「はい、できました、全部、同じ事が」
 多分ね、私の芝居って自転車とか、水泳とかと同じ感じで、一度できたらブランクがあってもできるものだと思ってるんだ。
「あー、それはわかります。すごいその感覚だなって思いますね。本番中もほんと、なんだろう、身体的には大変だけど心理的には凄い楽だった」
 しかも双葉ちゃんがやったエピソードは二つとも全然違うものだったじゃない?
 (注 双葉ちゃんは「大人になりたい」と叫んで訴える女子高生と『その男凶暴につき』というイメクラ嬢の二役をやった)
 でも、離陸したら同じ感じで行けたもんね。
「そうそうなんですよね」
 だから作品のテーマとかではないんだよねきっと。そこに居る状態をどうやって作るかっていう事だけで。稽古場で私はそれを伝達し続けただけなんだけれどもね。
「あー、なるほど。そう言われるとすごいわかります」
 話は全然違うじゃん二つとも。アプローチから全然違う、でも掴むとできるんだよね。両方とも。
「それはすごいなんかわかりました。そうだったんですよね、『ShortCuts2』って」
 そのうち、双葉ちゃんが現場入りしてからのインタビューに続きます。

 


 

二宮咲インタビュー(インタビューはじんのひろあき)後半、ほとんど私が喋ってる!
 どうですか今回は?
「まだ始まったばっかりなのに、どうですかねですか?(笑)」
 そう、どうですか?(笑)
「どうって、でもそう今回のは、ほんとに私が知ってる人しかいないから、ほんとに今んとこですけど、なんか、わかんないけどなんかめっちゃ楽しそうだし、めっちゃ、安心してます」
 ちなみに前々回の『ShortCuts2』の反省とかはどうですか?
「反省ですか?」
 やってみる前とやってみた後の感想というか。
「反省かあ」
 にのは短編初めてだったんでしょう? 
「ガソリーナのは初めて。ガソリーナというか、じんのさんのやつですよね。前回の『ShortCuts』で、一番思ったのは、私は出したことがない声を出してるな、と。私、役者さんの好きなところって、なんていうのかな、魂から出るみたいな声を出している人が好きなんですよ。でも、私が舞台の上で魂から出る声を出せてるのかよくあんまわかんなかったんです。結構キャラクターに寄ったりとかしちゃうこととか多くて、なんか、やだなあと思ったけど、前回の『ShortCuts2』でなんかすごい、私、今、魂から声出してるなと思って」
 あーなるほどね。
「だからすごい楽しかったです」
 ちなみにどんな話をやったのか、を、見てない方達にわかるように説明して。
「えっとですね、前回はですね、『ShortCuts』で上演できる、じんのさんの短編集の中に小学校五年生の佐藤アトムくんと言う男の子が、主人公の話が幾つかあるんですよ。アトム君がいろんなとこに行ったりとか、いろんな人に会ったりとかする話なんですね。アトムくんシリーズ。それがあって、その中の四つを上演したんです。まず、アトム君が、海外に行ってしまった親友を追いかけて行く話。ルドルニアっていう架空の国なんですけど、そこに行く空港のトランジットスペースにで、出会った女の人と話をする短編が一つ。その親友に会って、親友と親友の通っている小学校を見に行こうとしたら、小学校の警備さんに止められて、二人で「入れてくれ! 入れてくれ!」っていう話。あとその、親友の小学校の先生とアトムくんで親友が日本でいじめられていたから帰りたくない、という話、このルドルニア三部作」
 あれは『ルドルニア三部作』だったんだ! 
「あと、日本でアトムくんが通っている小学校の女の子の友達と、その女の子の友達が身長が伸び続けることに対して恐怖を覚える話をするんですよ、アトムくんに。それをちんちくりんのアトムくんに話すんですよ。この四本ですね」
 二宮は小学生を演じるのは初めてだったの?
「いや、初めてじゃあないですね。私、あれなんですよ、子供の役が多くて、それこそ小学生から高校生までの役が多いんですよ。でも私、子供の役って好きなんですよ」
 へぇーそうなんだ。
「男の子でも、女の子でもいいから、逆に、大人の役が、若干、苦手で」
 どうして? どうして?
「なんか、なんだろう。なんか、できないんじゃないかって思うんですよ。私は、自分のメンタルが子供だと思っているので。だから子供の役をやると、すごいぴったりくるんです」
 のびのびとできるわけね。
「そうなんです本当に、のびのびとやれるんですよ。わははは。子供ね! って思った瞬間に、あーじゃぁ、何やってもいいなって思えるんですよ。大人ってのがね、まだ、得体が知れないってのがあります。二十歳になったらもう大人だよとか、全然、自分より年下の子と一緒にバイトとかしてる事はあるんですけど、全然その人たちの方が大人な感じがしてて」
 でも、二宮、女っぽくなったよね、この一年で。
「(笑)そうですか? えー!」
 いや昨日さぁ、ハードディスクを整理していて、去年の四月の四日の午前一時に、NHKのBSで『ままごと』のお芝居が放送になっているのを録ってたんだよね。
 (注 昨年の春にやった『櫻の園2』の初演で、この劇団ままごとさんの芝居の一部を上演するシーンがあった。初芝かやのが昨年の四月の三日の稽古で、みなに『ままごと』の芝居を劇中でやりたい、とプレゼンしたんだけど、まったくなに言ってるかわからず、「なんだよ、それ!」と、みんなに罵倒され、そしたら初芝が「ちょうど今晩、NHKで『ままごと』放送するんですよー」と言ったのがこの日だった)
 あれがほんとに一年前の昨日なんだよ。あの時の二宮と比べたら全然大人っぽいと思うよ。
「そうですか。それはいいことなんですかねー」
 めちゃくちゃいいんじゃないんですかねー。
「いいことですかね(笑) 私、最近子供が好きだなあって。思うたんびに、いつまで子供をやってられるんだろうなって。そうかあ、大人っぽくなっているのか」
 んとね、でもね、そうそうアトムくんの話ね。
「はいはい」
 ネタバレっぽくあれだけど、アトム君というキャラクターをそもそも作ったときに、遊・機械全自動シアターっていう劇団があって、そこの高泉淳子さんが、持ちキャラクターっていうのかな、必ずそのキャラクターが登場するシリーズがあって、彼女がやっていたのが山田のぼるくんっていうんだけどね。
「はいはい」
 その山田のぼる君、ランドセルを背負って、すごい近眼で、視力矯正センターに行っていて、お母さんがいなくて、お父さんと二人暮らしで、学校から帰って、自分で電子レンジでご飯を温めて、それから塾に行ったりとか、あと、いじめられっ子の女の子の友達がいるんだけど、彼女はいじめらている事を自覚していないから、そんなに事態が切迫していなくてっていう、その頃の『イマドキの小学生』が生活している様をずっとスケッチするっていう、そういうシリーズがあったんだよ。
「はいはいはい」
 その山田のぼる君は、いろんなことを達観している子供なのね。例えばお父さんが帰ってこない日は、お父さんも仕事だからそれはしょうがないんだよね、僕が我慢するしかしょうがないんだよねって自分に言い聞かせてるような子なの。それでも、ある時それがもうオーバーフローしちゃって堪えきれなくて号泣したりするシーンがあるような芝居だったのね。
「あー!」
 で、遊・機械全自動シアターは芝居をエチュードで作っている頃だったので、山田のぼるくんのいろんなエチュードを、やりながら作っていると言うのを聞いてはいたのね。その山田くんというキャラクターがとても良くて、当時、高泉さんが三十歳ぐらいだったと思うんだ。その彼女がランドセルを背負って山田のぼるですっていって出てくるっていう。それを見て、いつか自分もこういうキャラクターを造形したいなと思っていたんですよ。
「はいはい」
 小学生が登場する。でもそれは小学生だけど、実は内面がもっと大人で達観とかしていて、だけどやっぱり小学生だからバランスが取れてはいなかったりするし、自分が何者かわかんなくて、とか。彼らなりの悩みとかコンプレックスがいっぱいあってみたいなね、そういうのをすごくうまく表現してる舞台だったんですよ。でも、それがリアルでトリビアルなだけかっていうと、全然そんなことはなくて、彼がすごく困ってる時、いつものように夜ご飯を電子レンジでチンしようとして、冷蔵庫開けると、よくわかんないコックさん達が大量に出てきて、なんだかよくわかんないでっかいオムライスとか作ってくれたりするんだよね。ファンタジーなのか、現実なのか、リアルなのかよくわかんない、良い意味でその境界線が曖昧な舞台だったんだ。タイトルは『僕の時間の深呼吸』っていうんだけれども、そのキャラクターの山田のぼる君を、自分なりに作りたくて……って考えて出てきたのが佐藤アトム君なんですよ。でも、真似にならないようにするにはどうすればいいか、って、そこでもまたかなり悩んだのね。山田のぼるくんを目指しているけれども、絶対に真似に見ないようにするためにどうするかって。すごく苦労した。例えばアトム君を海外にいかせてしまうとか、アトムくんのお父さんはニューハーフで、家にはお母さんが二人いる状態で、とか、そういういろんなことを背負っているけれども彼はそれを全部受け入れて世界とはそういうもんだと思って生きているみたいな物語が書きたかった。
「はいはい」
 それで、その時、それを演じられる子がたまたま居たんだけど、でも、その子がもう演劇そのものを辞めちゃったので、もう私の中では佐藤アトム君は封印してしまおうと思っていたところだった。でも、それで二宮と出会って、もしかしたら、もしかしたら、こいつ佐藤アトムくんができるんじゃないかなと思って、『櫻の園2』の秋の再演の本番と本番の間に読んでみてもらったら、できた! っていうのがこの芝居の始まりだったんだ。あとね、そうそう、これも言っとかなきゃ、実は初演でアトムくんをやってくれた子もサキちゃんて言うんだけど(笑) ややこしいけど、本当の話だから、そのサキちゃんがやった初演を見ている女性が今回の二宮アトムくんを見に来たんだ。
「へえ……」
 サキちゃんがやったアトムくんはそもそも、じんのさんが彼女に宛て書きしているから天然なんですよ芝居がって。サキちゃん個人のキャラクターに依存してましたからって。でも、二宮がやっているのは、演技してるわけで、演技してるからすごく、キャラクターの情景がはっきりしてるって言っていた。多分、じんのさんがやりたかった山田のぼるくん的なものは、二宮がやったアトムくんのほうが近いんだと思うって言って帰ってったんだ。
「うん。はい」
 彼女の感想は当たってると思うんだ。それは『櫻の園2』の本番の間に二宮に読んでもらった時に、いける、思ったところはそれなんじゃないかなって、彼女の感想を聞いて私は自分の中での整理ができたような気がしたんだけどね。そもそも、宛て書きされているものを二宮がやらされるわけでえ、それって、不自由な思いをするんじゃないかと思っていたけれども、でもそうではなかったんだ。思ったよりも、佐藤アトム君を割とすぱっとやり切ってしまった。私としては、それは本当に博打だからやってみないとわかんなかったんだ。でもその博奕は結構、当たりだったっていうのが『ShortCuts2』が終わってみての私の印象なんだよね。
「う、うん、うん(笑)あのえっと、それは褒め言葉なんですか?」
 とても褒め言葉です。
「ああそうなんですか! ああそうなんだ! 今、話聞いてて、すげーしまったなぁと思ってたんですよ」
 違うよ! 褒めてるよ!

つづく


 

益子祐貴インタビュー(インタビューはじんのひろあきですが、この日、2017/04/16日は稽古が盛り上がってしまい、本当は稽古の合間に益子嬢のインタビューを録ろうと思っていたのですが、時間がなく、帰り道に歩きながら喋ったものなので、ぐずぐずで。まあ、こんな日もあります)そして、益子、写真はちょっと待ってね
 どうですか益子さん今回は?
「今回ですか?」
 まず何をやるんですか?
「『M1へ行こう』と『泣きな』その二本です。相手は皆さんご存知のかわいい二宮咲ちゃんです」
 この二本は同じキャラクターが違う話に登場するものなんですよね。
「そうです、そうです」
 何のキャラクターなんですか?
「お笑い芸人の女性のあつこさんと、さくらさんです」
 そもそも、これはをこの二人でどうしてやることになったんですか?
 「これはですね、昨年11月の『ShortCuts2』の千秋楽の次の日に、『ShortCuts2』をやった新宿のシアターミラクルという劇場で、お楽しみ会というのがあったんですよ。お楽しみ会と言うのは、『ShortCuts2』の公演中、一番最後の日の日曜日が、なぜか空いてしまっていて、まるまる劇場で稽古ができるという日ができたんです。じんのさんの短編のストックが180本あるので、その日、都合がついて集まった役者さんで、それを端から読んでいこう、まだ知らない話とか、見たことがない話がある役者がいっぱいあるので、とにかくそれを順番に知っていく、という目的の会でした。劇場にじんのさんがPCとプリンタを持ち込んで、役者に次から次に台本をプリントアウトして渡して、初見立ち読みという、あまり他の劇団ではやらない、稽古を五時間繰り広げたわけです。ついでだからその前日までやっていた『ShortCuts2』にいらしてくれたお客さんの何人かも無料でご招待して、ビールを飲みながら見てもらうと言う。それが、ガソリーナのお楽しみ会だったわけです。それに私、最初に誘われてたんですけどもう、すっかり忘れてて前日にじんのさんに「明日、空いてる?」と言われて「空いてます」って言ったら「じゃぁ明日、例のお楽しみ会やるから来てね」と言われて「ああ! そんなのあった!」と思ってびっくりしました。そこで初めて二宮咲ちゃんと『M1へ行こう』を読みました。そしてすぐに「あーこれやりたい! あこれやりたい!」と叫んだんです。それで、その次の『3』では出番がなかったんですけど、今回の『4』でできることになりました」
 あれは、お楽しみ会で益子と二宮の二人で読んであまりにも調子が良かったので、最後まで読ませなかったんだよね。あの試し読みの時に、すでにやりたいと思ったの?
「やりたいと思いました!」
 どの辺が? 何にヒットしたの? 益子祐貴の。
「とりあえずちょうど、二年前にやったじんのさんの長編の『キタイ』もそうなんですけれども、お芝居にすごい熱量があるんですよ。そういうのが好きなんです。としか言いようがないんですけれども。やっぱりずっとそういうお芝居が好きなんです。自分がどういう形でもいいから、そういうのに関わっていたいと思ってました」
 そしたらなんと、今回それができることになったと。
「久々のクリーンヒットでしたね。私の中では! わー! これだ! 嬉しい! って言う」
 でもさっき言ったように、あまりにも益子と二宮とのバランスが初読みなのに出来が良かったので最後まで読ませるのがもったいなくなって、台本を取り上げたんだよね。「これはダメ、これはもういつかこの二人でやるから、今日はここまで!」って。
「そうなんですよ、初見読みで途中までで取り上げられちゃったじゃないですか、だから、ここから先どうなるんですかって、じんのさんに聞いたら「秘密!」って言われて」
 そして今回、それをやることになりました、と。そしたら相手が、二宮咲で。
「そうですね」
 二宮咲は益子にとってどうなの? 去年の春の『櫻の園2』のバージョン1からのつきあいだから、出会ってからちょうど一年ぐらいになるよね。
「そうですね。私から見てですか? 相変わらずめちゃくちゃだなと思います」
 どの辺が? どの辺がそう思うの?
「なんか『櫻の園2』で、キャラメルボックスの芝居をお勧めする二宮咲のワンマンショーがあるんですけれども、それを説明していた時に、こんな喋り方私もできないや。って言うくらいぐちゃぐちゃで、今もあの時のままでいてくれて本当に、本当に嬉しいです」
 全然大丈夫だった? それは?
「全然大丈夫でした。ぐちゃぐちゃのままえで。これは褒めてるんですよすごく。言い方が悪いから伝わりづらいんですけれども。よかった、二宮、変わってなくてって感じです」
 読み合わせをしてみて、行けそうな感じでしたか?
「私、最初に、お楽しみ会で読んでたんで、どんなものかわかっていたんですけれども、まぁ全然通してみて、いやこの作品に憧れたって言う気持ちがある分、ものすごいきついんですよ」
 きついの?」
「きついです、それがわかってて、やりたいって思ったんですけど」
 二宮とはそういう話をしたの?
「いえ全然、これは私の中の感想です。すいません、時々独り言を勝手に話してしまうんですよ」
 しょうがないよね、益子祐貴、一人っ子だからね。
「そうなんです一人っ子なんで独り言多いんですよ」
 やってて、手ごたえはあるの?
「うん、なんて言えばいいんだろう。大変だからすごく楽しいっていうか。何か危機が迫るほど迫れば迫るほど楽しいってあるじゃないですか、そんな感じです」
 今回、他の芝居はどうなんですか?
「今まで、稽古場で見た限りですけれども、すごい面白いと思います」
 オススメはなんですか? 益子さんのその中での。
「えー! 今日見た『その節は…』あれは、ピカイチで面白かったです。本当にあれは誰でも笑いやすい。なんだろう、こんなに世界観がめちゃめちゃなのも、久しぶりだし、すごいちっちゃいミニマムの視点から、こうぐわーって視界が広がる感じが、なんていうんですか、カメラワークも美味しい。近寄ったり離れたり、もう心の中でドローンを使ってるぐらい離れたりとかもするし」
 心のドローン!
「そうそう『その節は…』は、これからセリフが入ってまた動きとか細くなるんでしょうけど、もう、今のままで充分ですよ」
 いや、これ、今日、二回目の読み合わせだったんだけど……
 でも、まあ、今回の益子さんのオススメは『その節は…』で。
 ではとりあえず今日はこんな感じで